やっぱりそうなんだ。
壱馬くんってどんな家庭なのかな?
気になるけど、簡単に聞いていいものか迷うな。
と、その時。
__バタン!
という音とともに扉が開いて、みんなが入ってきた。
壱馬くんがあきれたように言う。
みんななんだか忙しそう。
そこに続けて、幹部以外にも色んな人が入ってきた。
「北人さん!これは!?」
「颯太さん!これなんですけど……」
え、えーと……こんなに近くに来られると、さすがに怖いんだけど……。
そんな様子にきづいたのか、壱馬くんが立ち上がった。
と私に言って、スタスタ歩いていく。
私は慌てて後をおった。
奥の方に行くと、なんと隠し扉が!!
壱馬くんは笑ってそう言うとドアを開けた。
そう言って部屋に入る。
そこは豪華だけど、上品かつオシャレな空間だった。
白を基調とした家具、テーブルやソファ、テレビやタンスが置いてあり、天井には小ぶりのシャンデリアが飾ってあって、部屋全体が明るく見える。
私はそう返事をして、とりあえずソファに座る。
壱馬くんも私の正面に置いてあるソファに腰かけた。
壱馬くんかや紡がれる衝撃的な言葉に、思わず口をつぐむ。
淡々と語っていく壱馬くんに、私はつい尋ねていた。
私の言葉に壱馬くんはフッと微笑んだ。
なんでもない事のようにそう言った壱馬くんに、なんだか切ない気持ちになる。
夏喜くん……?
私が疑問に思っていると、表情でそれを察したのか、壱馬くんが「ああ」と口を開く。
そうだったんだ……。
へぇ……。
他にも暴走族なんて沢山あるはずなのに……。
みんなが求めてた人……。
そうだったんだ……。
お兄ちゃんがいなくなった今、みんなにとって竜龍はまだ心のよりどころになってるのかな?
そう言った壱馬くんに優しく微笑みかけられて、胸がキュッと締め付けられる。
__お兄ちゃん。
お兄ちゃんの大好きだった場所が、今でもみんなの心のよりどころなんだって。
きっと、お兄ちゃんにとってはこんなにうれしいことなんてないよね。
ただの怖い人だと思ってた人たちにも、色んな事情があるんだなってことが分かったし。
なんだか秘密の隠れ家みたいだし、壱馬くんに認められた気がして少し嬉しい。
私がそう言って微笑むと、壱馬くんの頬が赤くなったように見えた。
……みんな、色んな事情を抱えてる。
壱馬くんも北人くんも、樹くんも颯太くんも。怖いとしか思ってなかったカラフルな髪色をした人達だってそう。
竜龍は、そんなみんなの不安や怒り、あるいはどこにもぶつけようのない思いを全て受け入れてくれる場所なんだ。
壱馬くんの言葉に微笑んで、なんだか心が温まっているの感じていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。