第18話

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2020/12/25 08:55
白濱(なまえ)
白濱あなた
そういえばみんなお金持ちなんだね
川村壱馬
川村壱馬
え?
白濱(なまえ)
白濱あなた
だってあの学校に通えるだけ、お金持ちってことでしょ?
川村壱馬
川村壱馬
まあ……そうだな、みんな結構、家は裕福だな
白濱(なまえ)
白濱あなた
そっか〜
川村壱馬
川村壱馬
ああ
やっぱりそうなんだ。



壱馬くんってどんな家庭なのかな?



気になるけど、簡単に聞いていいものか迷うな。



と、その時。



__バタン!



という音とともに扉が開いて、みんなが入ってきた。
吉野北人
吉野北人
やっば!!時間やばい!!
川村壱馬
川村壱馬
なんでもっと前からやらないんだよ
壱馬くんがあきれたように言う。



みんななんだか忙しそう。



そこに続けて、幹部以外にも色んな人が入ってきた。




「北人さん!これは!?」
吉野北人
吉野北人
えーとこれは……
「颯太さん!これなんですけど……」
中島颯太
中島颯太
あー適当にやっとけ!
え、えーと……こんなに近くに来られると、さすがに怖いんだけど……。



そんな様子にきづいたのか、壱馬くんが立ち上がった。
川村壱馬
川村壱馬
こっち来て
と私に言って、スタスタ歩いていく。



私は慌てて後をおった。



奥の方に行くと、なんと隠し扉が!!
白濱(なまえ)
白濱あなた
こんなのあったの!?
川村壱馬
川村壱馬
ああ、俺の部屋
壱馬くんは笑ってそう言うとドアを開けた。
川村壱馬
川村壱馬
入って
白濱(なまえ)
白濱あなた
う、うん!おじゃまします
そう言って部屋に入る。
白濱(なまえ)
白濱あなた
わあ……
そこは豪華だけど、上品かつオシャレな空間だった。



白を基調とした家具、テーブルやソファ、テレビやタンスが置いてあり、天井には小ぶりのシャンデリアが飾ってあって、部屋全体が明るく見える。
白濱(なまえ)
白濱あなた
すごいね……
川村壱馬
川村壱馬
歴代の総長が使ってきた部屋なんだ。ひとりひとり自分の趣味に合わせてコーディネートして
白濱(なまえ)
白濱あなた
へぇ……
私はそう返事をして、とりあえずソファに座る。



壱馬くんも私の正面に置いてあるソファに腰かけた。
川村壱馬
川村壱馬
あいつら、怖かっただろ?ごめんな
白濱(なまえ)
白濱あなた
……怖くないよ
川村壱馬
川村壱馬
無理するな、俺でも驚かされる時あるんだから
白濱(なまえ)
白濱あなた
そうなの!?
川村壱馬
川村壱馬
でも、みんなそれぞれ理由があってこの竜龍にいるからな
白濱(なまえ)
白濱あなた
え……?
川村壱馬
川村壱馬
あるヤツは親から虐待を受けて家出してきたし、またあるヤツは学校でいじめられて、ここを居場所にしてる
壱馬くんかや紡がれる衝撃的な言葉に、思わず口をつぐむ。
川村壱馬
川村壱馬
……幹部のみんなもいろんなこと抱えてるんだよ。北人は母親がモンスターペアレントで、耐えきれなくなってここに逃げ込んだし、樹は義理の姉のせいで女性恐怖症になった。颯太は中学のとき傷害事件の濡れ衣着せられて、むしゃくしゃしてけんかしてるところを亜嵐さんに拾われた
淡々と語っていく壱馬くんに、私はつい尋ねていた。
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、は……?
私の言葉に壱馬くんはフッと微笑んだ。
川村壱馬
川村壱馬
俺は、父親に虐待された
なんでもない事のようにそう言った壱馬くんに、なんだか切ない気持ちになる。
川村壱馬
川村壱馬
そんな顔するな。今は新しい両親ができて虐待も無くなったし、ずっと夏喜がいてくれたからな
夏喜くん……?



私が疑問に思っていると、表情でそれを察したのか、壱馬くんが「ああ」と口を開く。
川村壱馬
川村壱馬
幼なじみなんだよ
白濱(なまえ)
白濱あなた
え!?そうなの!?
川村壱馬
川村壱馬
ああ、小学生の時からのな
そうだったんだ……。
川村壱馬
川村壱馬
夏喜はとくになにか抱えてるって訳じゃねぇけど、俺が竜龍入るって言ったら一緒に入った
へぇ……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
なんで竜龍に入ったの?
他にも暴走族なんて沢山あるはずなのに……。
川村壱馬
川村壱馬
亜嵐さんがいたからかな
白濱(なまえ)
白濱あなた
お兄ちゃんが……?
川村壱馬
川村壱馬
5人ともそうなんだよ。亜嵐さんに出会って、誘われた
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、怪しいと思わなかった?
川村壱馬
川村壱馬
まさか。きっとみんなが求めてた人なんだよ
みんなが求めてた人……。
川村壱馬
川村壱馬
自分が辛い経験をしているからこそ、弱ってるヤツに優しくできる人で……。心のよりどころっていうのかな
そうだったんだ……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
……今は?
お兄ちゃんがいなくなった今、みんなにとって竜龍はまだ心のよりどころになってるのかな?
川村壱馬
川村壱馬
もちろん、亜嵐さんがいなくなったことはショックだ。でも亜嵐さんのおかげでできた絆や仲間は変わらないからな。……新しい仲間もいるし
そう言った壱馬くんに優しく微笑みかけられて、胸がキュッと締め付けられる。



__お兄ちゃん。



お兄ちゃんの大好きだった場所が、今でもみんなの心のよりどころなんだって。



きっと、お兄ちゃんにとってはこんなにうれしいことなんてないよね。
川村壱馬
川村壱馬
悪いな、暗い話になった
白濱(なまえ)
白濱あなた
ううん、みんなのこと知れて嬉しかった
ただの怖い人だと思ってた人たちにも、色んな事情があるんだなってことが分かったし。
川村壱馬
川村壱馬
……ありがとな
白濱(なまえ)
白濱あなた
私こそ、この部屋に連れてきてくれてありがとう
なんだか秘密の隠れ家みたいだし、壱馬くんに認められた気がして少し嬉しい。
川村壱馬
川村壱馬
いや……べつにいい。これからも自由に出入りしていいから
白濱(なまえ)
白濱あなた
ほんと!?ありがとう!
私がそう言って微笑むと、壱馬くんの頬が赤くなったように見えた。



……みんな、色んな事情を抱えてる。



壱馬くんも北人くんも、樹くんも颯太くんも。怖いとしか思ってなかったカラフルな髪色をした人達だってそう。



竜龍は、そんなみんなの不安や怒り、あるいはどこにもぶつけようのない思いを全て受け入れてくれる場所なんだ。
白濱(なまえ)
白濱あなた
話してくれて、ありがとう
川村壱馬
川村壱馬
……ああ
壱馬くんの言葉に微笑んで、なんだか心が温まっているの感じていた。

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