第60話

番外編2〜結婚と波乱万丈〜
3,710
2021/02/05 10:18
【あなたside】




川村壱馬
川村壱馬
じゃあやっぱりこの式場だな
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん
笑顔でそう返事をして、胸が満たされていくのを感じる。



今日は壱馬くんと一緒に式場巡り。



前々から目をつけていたところを実際に見に行くと本当にステキで、ついにやけてしまった私を見て壱馬くんがここに決めてくれた。



プラン表やなんならを見ていると、ついホッとため息をついてしまう。



とうとう私、壱馬くんと結婚するんだなぁ……。



数ヶ月前に無事大学を卒業して、壱馬くんはお父さんの会社に勤め始め、忙しい日々を送っている。



そんな時、いつもみたいにデートに出かけた。



場所は前にも連れてきてもらった海。



夕日が沈みかけて海の水面を照らし、夜空を待っている時だった。
川村壱馬
川村壱馬
……あなた
白濱(なまえ)
白濱あなた
うん?
優しい声で呼ばれて、海に向けていた顔を振り向かせる。
川村壱馬
川村壱馬
俺はお前のことを愛してる
白濱(なまえ)
白濱あなた
ど、どうしたの、突然……
真っ赤な顔で何とかそう言うと、壱馬くんが私の前に立つ。



あ……やっぱり背が高いな……。



ぼーっとそんなことを考えてしまうけど、そうでもして気を紛らわせていないと、本当に心臓が爆発してしまいそう……。
川村壱馬
川村壱馬
……俺はお前を守りたい。これまでも、これからもその覚悟は変わらないし、一生大事にしたいって思ってる。
__ドキン……ドキン……。
川村壱馬
川村壱馬
あなた
ゆっくりと膝をついて、澄んだ綺麗な目で私を見つめる。
川村壱馬
川村壱馬
俺と結婚してくれ
その一言を聞いた瞬間、じんわりと温かいものが胸の中に広がっていく。



壱馬くんをいつまでも見つめていたいのに、涙で前が見えない。
白濱(なまえ)
白濱あなた
っ……ひくっ……
川村壱馬
川村壱馬
……あなた
優しく声をかけられて、涙はどんどん増していくばかり。



これじゃ返事どころじゃない。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ごめんなさっ……うれっ、しくて……
川村壱馬
川村壱馬
……ん
そう言ってフッと目を細めた壱馬くんに、1度涙を拭う。



私も、ちゃんと返事をしないと……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くんのこと、大好きです。もし叶うなら一生一緒にいたいって思ってた。だから……
もう一度涙で見えなくなりそうになりながら、でも微笑みながら言った。
白濱(なまえ)
白濱あなた
よろしく、お願いします
次の瞬間、そっと唇が重なる。



これ以上の幸せなんてきっとない。



__出会った時から今までの思い出が頭の中を駆け巡る。



ああ、本当に幸せ……。








川村壱馬
川村壱馬
……、あなた
白濱(なまえ)
白濱あなた
えっ?
はっ、ぼーっとしちゃってた!
白濱(なまえ)
白濱あなた
ご、ごめん!
川村壱馬
川村壱馬
いや……疲れたか?
白濱(なまえ)
白濱あなた
ううん、そうじゃなくてね、プロポーズの時のことを思い出してたの
キラキラと輝くサファイアがついた婚約指輪を見つめながらそう言うと、壱馬くんは少し顔を赤くする。



ふふっ……
白濱(なまえ)
白濱あなた
私、幸せ者だな
川村壱馬
川村壱馬
……これからもっと幸せにしてやるよ
ちょっと照れながら、でもやっぱりいつもの壱馬くん。



私はもう一度ふふっと笑って、式場を見上げた。



壱馬くんと結婚することを竜龍のみんなや美樹に言った時はみんなすごく祝福してくれて、結婚式にも来てくれるみたい。



そんな幸せ絶好調なある日。



お屋敷で花嫁修行としてママから料理を習っていて、少しだけママが席を外した時。
坂下聖
あなたさんっ!
白濱(なまえ)
白濱あなた
ははははい!
キッチンに飛び込んできた声にびっくりして小麦粉が辺り一面に……。



や、やってしまった……。



ガーンとショックを受けながら呼んだ人を見ると、
白濱(なまえ)
白濱あなた
あっ……
この人、坂下グループのひとり息子坂下聖(ひじり)さんだ。



何度か会ったことあるけど、なんだかちょっと苦手なんだよね……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
こ、こんにちは
坂下聖
お久しぶりです。今日はお父様と仕事の打ち合わせがあって参ったんです。ですからあなたさんにも挨拶を、と思いまして
あ、そうだったんだ……。
坂下聖
ところであなたさん。風の噂で聞いたのですが、この度ご結婚なさるとか……
白濱(なまえ)
白濱あなた
は、はい、まぁ……
あらためて言うとちょっと照れるな。
坂下聖
なりません!
白濱(なまえ)
白濱あなた
……へ?
思わず間抜けな声が出て、慌てて口を押さえる。



け、けどなんで突然?
坂下聖
あなたさんは僕と結婚するんですよ!
白濱(なまえ)
白濱あなた
え、えーと……
な、何言ってるんだろう、この人……?
坂下聖
そう言ってたじゃないですか!もしや、川村とかいう輩に騙されているんじゃ……
白濱(なまえ)
白濱あなた
そ、そんなことないです!
断じて!断じてそれはない!



っていうかそれより『そう言ってた』って……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あの、何度かお会いしただけだと思うんですけど……
坂下聖
けど1度お約束しませんでした?
はい?
坂下聖
ほら、前にずっと一緒にいたいと言ったら頷いてくれたじゃないですか
え、そんなこと言ったっけ?



多分勘違いだと思うんだけどな。
坂下聖
とにかく、あんな奴にあなたさんをお渡しできません!また参ります!
それだけ言うと背を向けて去っていってしまった。



な、なんだったの……。



私は首を傾げてから、さっきぶちまけてしまった小麦粉を見てため息をついた。

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