その日の放課後。
教室がザワっとして、いっせいにみんなが私を見る。
聞き覚えのある声にゆっくりと入口を見ると。
みんなの視線を感じながらゆっくりと頷くと、あなたが少し心配そうな目を送る。
そう言ったあなたに微笑んで、貼り付けたような笑みを浮かべた先輩について行った。
中庭に到着して、先輩が足を止める。
そう言って私を見る先輩。
『そろそろ告白かな?』なんて言ってたもんね。
思い切ってそう言うと、先輩の顔がみるみる青ざめていく。
ああ、やっぱり夢じゃなかったんだ。
言いながら、またもや涙が溢れそうになったけどグッとこらえる。
……はい?
そう言って頭の後ろをわざとらしくかく先輩。
何言ってんの、この人。
こんなことで、私の事騙せるとか思ってるわけ?
たしかに昨日までは完全に騙されてたけど、私だってそこまでバカじゃない。
……嘘ばっかり。
はっきりそう言って先輩を見る。
あんなこと言われた今、正直顔を合わせるのだっていやなくらいだよ。
そう思っていると、
「はあ……」と大きくため息までついて、そんなことを言った先輩。
そこに、いつも優しくしてくれた先輩の面影はなくて。
悔しさに、悲しさに負けないようにぎゅっと唇を噛む。
なにっ、それ……。
怒りでカッとなったあまり、目頭まで熱くなる。
泣きたくない。こんなしょうもないことで。
こんな人のために泣くなんてもったいない。
泣いてやるもんか。
必死で唇を噛んでいると。
澄んだ声。
その声に、なにか引き寄せられるようにそっちを向くと。
そこに立っていたのは堀くんだった。
戸惑ったようにそう言った先輩に、堀くんは微笑む。
有無を言わさずに私の手を引く堀くんに、なぜか一瞬胸がドキンっと音を立てた。
なに……?今の感じは……。
堀くんがふと足を止めて振り返る。
堀くんの言葉に、さすがに焦り出す先輩。
なにしろ川村くんって学校一の人気者だし。
もし睨まれたら女子はおろか、男子にも見向きもされなくなりそうだもんね……。
低い声に思わず私までびくりとする。
そう言って先輩を睨む堀くん。
先輩はそう言うと、呼び止める間もなく去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。