第26話

風邪と看病と……
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2021/01/02 07:54
いじめ問題から少し経ち、今ではすっかりいつも通りの日常。



結局あの子たちは先生たちにこってりと絞られたあと、反省文を書かされたり、スクールカウンセリングを受けたりと、学校側もそれなりの対応策をとってくれているらしい。



そんな日々の中、私は今日もたまり場に向かう。



けど……。
西条美紅
西条美紅
かーずまっ!
壱馬くんはイヤそうな顔をして声の主、美紅ちゃんを見る。
川村壱馬
川村壱馬
なんだよ
西条美紅
西条美紅
相変わらずつめたーい。まあ、そこがいいんだけどねっ
川村壱馬
川村壱馬
わけわかんねぇこと言うな
壱馬くんが美紅ちゃんと話すたびに胸がチクッと痛む。



パパから、壱馬くん同伴の迎えがあればたまり場に行っていいという許可が出て、最近は金曜日以外の日もたまり場に行っている。



そして、なぜか美紅ちゃんも。



美紅ちゃんがいるのはべつにいいんだけど、美紅ちゃんの私に対する刺すような視線が痛い。
藤原樹
藤原樹
……あなた
そう言って声をかけてくれたのは樹くん。
藤原樹
藤原樹
この本……読みたかったんだろ?
そう言って差し出したのは、すごくレアな外国の本!!



ファンタジーもので、文章もさながら表紙もすっごく綺麗で、ずっと読みたかったんだよね!
白濱(なまえ)
白濱あなた
わあ!樹くんありがとう!!!
私は樹くんに微笑みかけた。



途端に顔を赤くして背ける樹くん。
藤原樹
藤原樹
べつに……
ほんと、クールだなあ。
白濱(なまえ)
白濱あなた
樹くんもなにか貸してほしい本ある?
藤原樹
藤原樹
んー……。あなたが初めてここ来た時読んでたあの本
あ〜、あのファンタジーね!
白濱(なまえ)
白濱あなた
了解!明日にでも持ってくるね!
藤原樹
藤原樹
……ありがと
__私は、こっちをじっと見ている壱馬くんには気づかなかった。




















【壱馬side】


イライラする。その理由は……

白濱(なまえ)
白濱あなた
わあ!樹くんありがとう!
樹に微笑みかけてるアイツ。



樹のやつ、何顔赤くしてんだ。
白濱(なまえ)
白濱あなた
樹くんもなにか貸してほしい本ある?
樹くん、樹くん、樹くん。



綺麗な高い声で呼ばれるのはその名前ばかり。



あいつが他のやつの名前を呼んでるのが……なんか、すげぇイヤだ。
西条美紅
西条美紅
ねえ壱馬ってばぁ〜
そう言ってすりよってくる、北人の幼なじみの美紅。



面倒だな……。



ただでさえイラついてるってのに……。
西条美紅
西条美紅
……またあの子?
川村壱馬
川村壱馬
……関係ないだろ
俺はフッと顔をそらした。



これ以上見ていたくない。
西条美紅
西条美紅
ねえ壱馬ぁ〜
あと、こいつとも一緒にいたくない。



ベタベタベタベタ……。



彼女かなにかと勘違いしてるんじゃないのか。



こういうのが1番面倒なタイプだ。



俺は美紅から離れて颯太に声をかける。
川村壱馬
川村壱馬
颯太、対戦しないか?
中島颯太
中島颯太
お、いいよー!!あなた!あなたもやるか?
あなた……颯太がそう呼ぶのにも反応してしまう。



べつに俺もそう呼ぶし、他のやつらだって初めからそう呼んでたのに。



なぜか最近は、そんな小さなところが気になって仕方がない。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あーうん!する!
あなたはそう言うと、笑顔で俺の横に座った。



それだけでバクバク心臓がなって落ち着かない。



すると案の定……。
西条美紅
西条美紅
私もするぅ〜!
川村壱馬
川村壱馬
……
俺とあなたの間に割ってはいるように座った美紅。
西条美紅
西条美紅
やり方教えてぇ?
彼女ヅラに加えてお嬢様ヅラまでしやがって。
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、これは……
西条美紅
西条美紅
あなたちゃんは黙ってて。私は壱馬に教えてもらいたいの
いったいなんなんだ?



こいつのあなたに対する敵意というか、完全無視は。



せっかくあなたが親切に教えようとしてるってのに。
川村壱馬
川村壱馬
あなたが教えようとしてくれてるんだから、あなたに聞けよ
西条美紅
西条美紅
ええー?ならいいや、私は壱馬のこと応援しておこーっと
そう言って俺にもたれかかってくる。



はぁ……いい加減にして欲しい。
白濱(なまえ)
白濱あなた
……私、ちょっと席外すね
中島颯太
中島颯太
あなた?
颯太がそう言ったけど、あなたは何も答えずに立ち上がって部屋を出ていった。
川村壱馬
川村壱馬
……おい、いい加減にしろ
そう言って美紅を睨むと、素知らぬ顔をされる。
西条美紅
西条美紅
あなたちゃんが出ていったのなんて、私関係ないけど
美紅の言葉に颯太がコントローラーを置いた。
中島颯太
中島颯太
はあ?あのさ、お前感じ悪いねん。あなたがお前に何したってゆーねん?
そう言って美紅を見る颯太の目はいつもとは違う鋭い目をしていた。
西条美紅
西条美紅
ほーんと、颯太って意地悪なんだから
中島颯太
中島颯太
だからそれはお前やって
藤原樹
藤原樹
……ふたりともうるさい
颯太と美紅が言い合い、樹まで参戦し始めた時、俺は1人立ち上がった。
川村壱馬
川村壱馬
……行ってくる
中島颯太
中島颯太
……。おー
颯太のどこか探るような視線には気付かないふりをして、俺はあなたを追って外に出た。

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