第53話

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2021/01/29 07:13
そして、ついにやってきた壱馬くんの誕生日。



「「「「誕生日おめでとう!」」」」



放課後のたまり場で、壱馬くんの誕生日パーティーが開かれている。
白濱(なまえ)
白濱あなた
これで17歳なんだね
川村壱馬
川村壱馬
そうだな。あと3年で成人か……
私の言葉に、しみじみとした様子でそう言った壱馬くん。
川村壱馬
川村壱馬
竜龍で過ごした日も、あっという間だったな
吉野北人
吉野北人
ちょっとー、おじさんみたいなセリフになってるよ
北人くんの言葉に、他の人たちも笑い声をあげる。



その笑いがおさまったころ、壱馬くんがすっと顔を上げてみんなを見回した。
川村壱馬
川村壱馬
今日、俺たちは竜龍を卒業する。新しい総長は、こいつに任せようと思ってる。
壱馬くんがそう言って、ひときわ目立つ金髪の子を呼び寄せた。
新総長
俺は、ずっと壱馬さんに憧れてました。壱馬さんのような総長になれるよう、精一杯努めることを誓います
正直そうな、まっすぐな瞳でそう言ったその子に、壱馬くんがフッと微笑んで口を開く。
川村壱馬
川村壱馬
ああ、頼んだ。みんなの居場所として、竜龍を守ってくれ
新総長
はい。絶対に守り抜いてみせます!
その言葉に「おおお!」と歓声が上がり、一気にお祝いムードに包まれた。



みんなが喋って笑いあっている中で、少し疲れてしまった私は1度たまり場の外に出て夜風に当たる。



心地いい風……。



目をつむって考えていると、
川村壱馬
川村壱馬
ひとりでこんなとこにいたら、またさらわれるぞ
聞きなれた低い声に、微笑みながら振り返る。
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん
川村壱馬
川村壱馬
大丈夫か?
そう言って私の隣に座る壱馬くんに「うん」と頷く。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ちょっと疲れただけだよ。このあとも暴走するんでしょ?そのための休憩
川村壱馬
川村壱馬
そうか
壱馬くんはそう言って、何気なく空を見上げる。



あ、プレゼント今渡そうかな。



さっきからずっと手に持ってたけど、人が多くてなかなか渡せなかったもんね。



そう思って、ボールペンの入った箱を壱馬くんの前に差し出す。



壱馬くんはそれに気づいて、空から私に視線を移した。
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、改めてお誕生日おめでとう。これ、プレゼントなの
そう言うと、壱馬くんは嬉しそうに微笑んで、箱を受け取ってくれる。
白濱(なまえ)
白濱あなた
そらね、名前入りのボールペンなの。壱馬くんが私にくれた指輪も、内側に名前を入れてくれてたでしょ?最初は私も指輪を贈ろうかと思ったんだけど、バイクに乗る壱馬くんはこっちの方がいいかなと思って
喜んでもらえたかな?



そう思って壱馬くんを見ると、柔らかい笑顔を向けてくれた。
川村壱馬
川村壱馬
すげぇ嬉しい。色々考えてくれてありがとな
白濱(なまえ)
白濱あなた
うんっ
私もそう答えて微笑み返し、空を見上げる。



今日はすごく晴れてるな。



星も見えるし、三日月も煌々と輝いている。
川村壱馬
川村壱馬
……綺麗だな
白濱(なまえ)
白濱あなた
あ、今同じこと考えてたよ。今日の夜空、綺麗に晴れてるよね
川村壱馬
川村壱馬
いや、そうじゃなくて、お前が
……はい!?



ぼっ!!と真っ赤になった顔を壱馬くんに向けると、優しく髪を撫でられる。
川村壱馬
川村壱馬
……あなた、誕生日プレゼントに、もうひとつ欲しいものがある
白濱(なまえ)
白濱あなた
え……な、なに?
ボールペン以外何も用意してないんだけど……。
川村壱馬
川村壱馬
……キスしていいか?
白濱(なまえ)
白濱あなた
っ……
なっ……!



いつもは確認なんかしないのにっ!
川村壱馬
川村壱馬
……あなた
答えを求めるように私の名前を呼ぶ壱馬くんに、ゆっくりと頷く。
白濱(なまえ)
白濱あなた
い……いい、よ?
うつむきながらそう言うと、壱馬くんはフッと笑って私の髪に指を通した。



ふわっと壱馬くんのいい匂いが私を包んで、ゆっくりと顔が近づいていく。



そっと目を閉じると、壱馬くんの長いまつ毛が私の頬にあたるのを感じ、その後唇が重なる。



幸せが全身を駆け巡って、胸がいっぱいになる。



その後ゆっくりと唇が離れて、抱きしめられた。
川村壱馬
川村壱馬
亜嵐さんと出会って、お前と出会って。どれも竜龍が繋いでくれた絆だな
心からの感謝を込めたような、そんな声。



その声と温かさに、私の心はなんだかとても穏やかになって、壱馬くんの背中をそっと抱き締め返した。










少ししてからまたパーティーに戻り、沢山用意されていたごちそうがすっかりなくなると、みんなは特攻服を来て集まった。
川村壱馬
川村壱馬
今日は、最後の暴走だ。みんな思いっきり楽しんでくれ!
「「「「おぉー!!」」」」



そうして最後の暴走に出た。



今日は、私は壱馬くんのバイクの後ろにのる。
川村壱馬
川村壱馬
しっかりつかまっとけよ?
白濱(なまえ)
白濱あなた
うんっ!
そうして走り出した竜龍。



壱馬くんは先頭に回って誰よりも速く走っていく。



みんなの前に出て後ろを振り返ると、いくつものキラめく星が……。



車からは見えない美しさがあった。



バイクのライト、みんなが心から楽しんでいるムード。



間近に聞こえる爆音さえも、心地よく耳に響いてくる。



……この光景、絶対忘れない。



私は心の中でそっと誓って、壱馬くんの腰に回している手にギュッと力を入れた。



ほんとにいろんなことがあった。



けどやっぱり……高校生活の中で1番の宝物になるだろう。



__ひとしきり暴走を終えたあと。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ねぇ、みんなで写真撮ろう?
私の提案にみんな賛成してくれて、竜龍の全メンバーが集まる。



髪色やピアス、タトゥーがすごくて、初めは怖かったみんな。



幹部のみんな……。



夏喜くん、颯太くん、樹くん。



副総長の北人くん、そして……。



総長で私の最高の恋人、壱馬くん。



みんなが竜龍を卒業した。
白濱(なまえ)
白濱あなた
はい、チーズ!
パチッとフラッシュが光って、全員が笑顔で1枚の写真におさまった。

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