そして、ついにやってきた壱馬くんの誕生日。
「「「「誕生日おめでとう!」」」」
放課後のたまり場で、壱馬くんの誕生日パーティーが開かれている。
私の言葉に、しみじみとした様子でそう言った壱馬くん。
北人くんの言葉に、他の人たちも笑い声をあげる。
その笑いがおさまったころ、壱馬くんがすっと顔を上げてみんなを見回した。
壱馬くんがそう言って、ひときわ目立つ金髪の子を呼び寄せた。
正直そうな、まっすぐな瞳でそう言ったその子に、壱馬くんがフッと微笑んで口を開く。
その言葉に「おおお!」と歓声が上がり、一気にお祝いムードに包まれた。
みんなが喋って笑いあっている中で、少し疲れてしまった私は1度たまり場の外に出て夜風に当たる。
心地いい風……。
目をつむって考えていると、
聞きなれた低い声に、微笑みながら振り返る。
そう言って私の隣に座る壱馬くんに「うん」と頷く。
壱馬くんはそう言って、何気なく空を見上げる。
あ、プレゼント今渡そうかな。
さっきからずっと手に持ってたけど、人が多くてなかなか渡せなかったもんね。
そう思って、ボールペンの入った箱を壱馬くんの前に差し出す。
壱馬くんはそれに気づいて、空から私に視線を移した。
そう言うと、壱馬くんは嬉しそうに微笑んで、箱を受け取ってくれる。
喜んでもらえたかな?
そう思って壱馬くんを見ると、柔らかい笑顔を向けてくれた。
私もそう答えて微笑み返し、空を見上げる。
今日はすごく晴れてるな。
星も見えるし、三日月も煌々と輝いている。
……はい!?
ぼっ!!と真っ赤になった顔を壱馬くんに向けると、優しく髪を撫でられる。
ボールペン以外何も用意してないんだけど……。
なっ……!
いつもは確認なんかしないのにっ!
答えを求めるように私の名前を呼ぶ壱馬くんに、ゆっくりと頷く。
うつむきながらそう言うと、壱馬くんはフッと笑って私の髪に指を通した。
ふわっと壱馬くんのいい匂いが私を包んで、ゆっくりと顔が近づいていく。
そっと目を閉じると、壱馬くんの長いまつ毛が私の頬にあたるのを感じ、その後唇が重なる。
幸せが全身を駆け巡って、胸がいっぱいになる。
その後ゆっくりと唇が離れて、抱きしめられた。
心からの感謝を込めたような、そんな声。
その声と温かさに、私の心はなんだかとても穏やかになって、壱馬くんの背中をそっと抱き締め返した。
少ししてからまたパーティーに戻り、沢山用意されていたごちそうがすっかりなくなると、みんなは特攻服を来て集まった。
「「「「おぉー!!」」」」
そうして最後の暴走に出た。
今日は、私は壱馬くんのバイクの後ろにのる。
そうして走り出した竜龍。
壱馬くんは先頭に回って誰よりも速く走っていく。
みんなの前に出て後ろを振り返ると、いくつものキラめく星が……。
車からは見えない美しさがあった。
バイクのライト、みんなが心から楽しんでいるムード。
間近に聞こえる爆音さえも、心地よく耳に響いてくる。
……この光景、絶対忘れない。
私は心の中でそっと誓って、壱馬くんの腰に回している手にギュッと力を入れた。
ほんとにいろんなことがあった。
けどやっぱり……高校生活の中で1番の宝物になるだろう。
__ひとしきり暴走を終えたあと。
私の提案にみんな賛成してくれて、竜龍の全メンバーが集まる。
髪色やピアス、タトゥーがすごくて、初めは怖かったみんな。
幹部のみんな……。
夏喜くん、颯太くん、樹くん。
副総長の北人くん、そして……。
総長で私の最高の恋人、壱馬くん。
みんなが竜龍を卒業した。
パチッとフラッシュが光って、全員が笑顔で1枚の写真におさまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。