「メリークリスマス!」
そう言って乾杯して、おいしいディナーを食べた。
さっきのママの話で頭がいっぱいで、メニューの記憶は曖昧だけど……。
夕食を終えて、私がママと作ったケーキも食べ、食後のコーヒーを飲みながらふと時計を見ると7時を指している。
ママの言葉に思い出す。
今年はとくにすごいって聞いたな……。
行ってみたいけど、壱馬くんはいいのかな?
壱馬くんを見ると、目が合って微笑んでくれた。
そう言って手を差し出した壱馬くんに、私は迷わず手を取った。
ママの声に頷いて、ふたりで部屋を出た。
イルミネーションは街中の大通りの真ん中で見ることができるので、近くまで車で送って貰うことにした。
そうして車を降りると思ったよりも寒くて、さっきまでは降っていなかった、雪まで散らついている。
ホワイトクリスマスだ……。
あ、同じこと考えてた……。
そんなちょっとしたことが嬉しくて、思わずふふっと笑みがこぼれる。
そう言うと壱馬くんは私の髪についた雪を払い、スッと手を取った。
そんなさりげない会話をしながら幸せを感じる。
こんなふうに、いつの間にか隣にいることが当たり前になったことが嬉しくて。
手袋越しの壱馬くんの温もりが伝わってきて、心までぽかぽかと温まってくる。
楽しみだな……。
ついてみるとすごい人だかり。
壱馬くんは私が人混みに流されないように、なるべく人が少ないところに私を引いてくれた。
微笑みながらそう言ってくれた壱馬くん。
イルミネーション点灯まであと10分。
私はドキドキしながら、鞄から包みを取り出した。
そう言って手渡すと、壱馬くんは驚いた表情をして受け取ってくれた。
ちょっと緊張しながら、壱馬くんが包みを開けるのを見る。
気に入ってもらえるといいけど……。
そうして出てきたのは。
壱馬くんが私に笑いかけてくれて、なんだかほっとする。
編み物なんてするのは初めてでちょっと手間取っちゃったけど、壱馬くんがつけるのを想像しながら編んだらすごく楽しくて、すぐに完成した。
よかった、喜んでもらえて。
早速マフラーを首に巻いた壱馬くんに、なんだか私の心まで温かくなる。
なんだろう?
そう思っていると、
目をつむる?
言われた通りに目を閉じて、何が起きるのか待っていると、右手を取られて、冷たいものが指に当たった。
ゆっくりと目を開けると。
右手の薬指に、小ぶりの青い石のついた指輪がはめてあった。
その控えめだけど美しい、キラキラとした輝きを見ていると、壱馬くんが口を開いた。
ドキンっと胸が鳴った。
一途な、想い……。
優しい声に呼ばれてそっと顔を上げると、真剣な瞳が私の目に映った。
いつか……左手に……。
その言葉が意味することを察して、涙が溢れそうになる。
泣きそうになるのをこらえて笑顔を見えると、壱馬くんも微笑んでくれる。
好きが、溢れ出て。
『好き』 『愛しい』
そんな特別な思いを、壱馬くんが教えてくれた。
世界で1番、好きな人……。
壱馬くんを好きになって、こんな幸せな気持ちになって。
これ以上望むことなんてなにもない。
幸せに浸かっていると、その気持ちを彩るようにパッとイルミネーションが点灯した。
壱馬くんは私を見つめて、私も見つめ返す。
そして微笑みあうと……甘い甘いキスを交わした。
その後、どちらかともなく手を取り合う。
『いつまでも壱馬くんと一緒にいられますように』
キラリと光指輪に、そんな思いを乗せて。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。