第44話

3,985
2021/01/20 10:07
「メリークリスマス!」



そう言って乾杯して、おいしいディナーを食べた。



さっきのママの話で頭がいっぱいで、メニューの記憶は曖昧だけど……。



夕食を終えて、私がママと作ったケーキも食べ、食後のコーヒーを飲みながらふと時計を見ると7時を指している。
ママ
あなた、壱馬くんとイルミネーションを見に行ってきたらどう?
ママの言葉に思い出す。



今年はとくにすごいって聞いたな……。



行ってみたいけど、壱馬くんはいいのかな?



壱馬くんを見ると、目が合って微笑んでくれた。
川村壱馬
川村壱馬
行くか
そう言って手を差し出した壱馬くんに、私は迷わず手を取った。
白濱(なまえ)
白濱あなた
じゃあ、いってきます
ママ
気をつけてね
ママの声に頷いて、ふたりで部屋を出た。



イルミネーションは街中の大通りの真ん中で見ることができるので、近くまで車で送って貰うことにした。



そうして車を降りると思ったよりも寒くて、さっきまでは降っていなかった、雪まで散らついている。



ホワイトクリスマスだ……。
川村壱馬
川村壱馬
ホワイトクリスマスだな
あ、同じこと考えてた……。



そんなちょっとしたことが嬉しくて、思わずふふっと笑みがこぼれる。
川村壱馬
川村壱馬
どうした?
白濱(なまえ)
白濱あなた
ううん、なんでも
そう言うと壱馬くんは私の髪についた雪を払い、スッと手を取った。
白濱(なまえ)
白濱あなた
今ね、気温2度しかないらしいよ
川村壱馬
川村壱馬
それは……寒いはずだな
そんなさりげない会話をしながら幸せを感じる。



こんなふうに、いつの間にか隣にいることが当たり前になったことが嬉しくて。



手袋越しの壱馬くんの温もりが伝わってきて、心までぽかぽかと温まってくる。
白濱(なまえ)
白濱あなた
点灯は8時だったよね?
川村壱馬
川村壱馬
ああ
楽しみだな……。



ついてみるとすごい人だかり。



壱馬くんは私が人混みに流されないように、なるべく人が少ないところに私を引いてくれた。
白濱(なまえ)
白濱あなた
ありがとう
川村壱馬
川村壱馬
ああ
微笑みながらそう言ってくれた壱馬くん。



イルミネーション点灯まであと10分。



私はドキドキしながら、鞄から包みを取り出した。
白濱(なまえ)
白濱あなた
壱馬くん、これ、クリスマスプレゼントなの。受け取って?
そう言って手渡すと、壱馬くんは驚いた表情をして受け取ってくれた。
川村壱馬
川村壱馬
ありがとな。開けていいか?
白濱(なまえ)
白濱あなた
う、うん
ちょっと緊張しながら、壱馬くんが包みを開けるのを見る。



気に入ってもらえるといいけど……。



そうして出てきたのは。
川村壱馬
川村壱馬
手編みのマフラーか
壱馬くんが私に笑いかけてくれて、なんだかほっとする。
川村壱馬
川村壱馬
大変だっただろ
白濱(なまえ)
白濱あなた
ううん、そんなことないよ
編み物なんてするのは初めてでちょっと手間取っちゃったけど、壱馬くんがつけるのを想像しながら編んだらすごく楽しくて、すぐに完成した。



よかった、喜んでもらえて。



早速マフラーを首に巻いた壱馬くんに、なんだか私の心まで温かくなる。
川村壱馬
川村壱馬
俺も、渡すものがある
なんだろう?



そう思っていると、
川村壱馬
川村壱馬
その前に、目をつむってくれるか?
白濱(なまえ)
白濱あなた
え?
目をつむる?



言われた通りに目を閉じて、何が起きるのか待っていると、右手を取られて、冷たいものが指に当たった。



ゆっくりと目を開けると。
白濱(なまえ)
白濱あなた
わあ……!きれい……っ
右手の薬指に、小ぶりの青い石のついた指輪がはめてあった。



その控えめだけど美しい、キラキラとした輝きを見ていると、壱馬くんが口を開いた。
川村壱馬
川村壱馬
……それ、サファイアのイミテーションリングなんだ。サファイアには、一途な想いって意味がある
ドキンっと胸が鳴った。



一途な、想い……。
川村壱馬
川村壱馬
あなた
優しい声に呼ばれてそっと顔を上げると、真剣な瞳が私の目に映った。
川村壱馬
川村壱馬
今はイミテーションリングだし右手だけど、いつか本物を左手につける。それでもいいか?
いつか……左手に……。



その言葉が意味することを察して、涙が溢れそうになる。
白濱(なまえ)
白濱あなた
っ……嬉しいっ……
泣きそうになるのをこらえて笑顔を見えると、壱馬くんも微笑んでくれる。
川村壱馬
川村壱馬
俺は、お前以外考えられない
白濱(なまえ)
白濱あなた
私もだよ……大好きっ……
好きが、溢れ出て。



『好き』 『愛しい』



そんな特別な思いを、壱馬くんが教えてくれた。



世界で1番、好きな人……。



壱馬くんを好きになって、こんな幸せな気持ちになって。



これ以上望むことなんてなにもない。



幸せに浸かっていると、その気持ちを彩るようにパッとイルミネーションが点灯した。
白濱(なまえ)
白濱あなた
綺麗……
壱馬くんは私を見つめて、私も見つめ返す。



そして微笑みあうと……甘い甘いキスを交わした。



その後、どちらかともなく手を取り合う。



『いつまでも壱馬くんと一緒にいられますように』



キラリと光指輪に、そんな思いを乗せて。

プリ小説オーディオドラマ