第35話

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2021/01/11 07:49
【樹side】






いつからだろう。



あなたを意識するようになったのは……。



女嫌いの俺は、初めはあなたを毛嫌いしてた。



ほかの女と一緒で、きゃーきゃー騒ぎながら無理やり俺に触ってきたりして、女嫌い直そうとするんだろうな、って思ったから。



でもそんなことなくて。



それどころか俺を気遣ってくれた。



バイクに乗せた時も、すごい遠慮がちに手ぇ回してたし……。



そんなあなたに惚れたんだ、女嫌いの俺が。



でも……壱馬と付き合うことになって。



そのことを聞かされた時、心臓が止まるかと思った。



それほど……ショックだったんだ。



それほど……好きなんだ。



初めてできた好きな人……。



その初恋の人……あなたは今、少し顔を赤くして壱馬と笑顔で話してる。



その笑顔を……俺に向けてほしくて。



でもそんなの絶対に無理で……。



だから言ったんだ、好きだって。



俺の想いを伝えた時、あなたは案の定、困ったような顔をして俺を見た。



その時ドアが開いて壱馬と北人が帰ってきて。



あなたは立ち上がり、俺から離れて壱馬のところに行く。



それがすごく悔しくて……。



俺はいつものポーカーフェイスで本を手にとった。



でも……あなたと壱馬のことが頭から離れなかった。
















【あなたside】





どうしよう……樹くんの告白が頭から離れない……。



べつに、樹くんが気になるとかじゃなくて……。



私が好きなのは壱馬くんだけど、それでも今は、心が乱されたままだよ……。
川村壱馬
川村壱馬
……あなた?
壱馬くんが私を覗き込むように見る。
川村壱馬
川村壱馬
どうした?
白濱(なまえ)
白濱あなた
な、なんでもないよっ
そう言って誤魔化してなにげなく樹くんを見ると、いつものように本を読んでいる。
川村壱馬
川村壱馬
……ちょっと来い
壱馬くんはそう言って私の腕をつかんで引っ張っていく。
吉野北人
吉野北人
え?どうしたの?
戸惑っている様子の北人くんが、壱馬くんに聞くけど。
川村壱馬
川村壱馬
ちょっとふたりにしてくれ
壱馬くんはそれだけ言い、私を連れて総長部屋に入った。



バタンと少し乱暴にドアを閉める。



なんか……怒ってる?
白濱(なまえ)
白濱あなた
あの、壱馬く……
川村壱馬
川村壱馬
なにされた?
……え?
川村壱馬
川村壱馬
……樹に、なにされた?
ぎくっ……。
川村壱馬
川村壱馬
樹のこと見てただろ?
壱馬くんはそう言って私を見る。



その強いまなざしに、思わず顔を背ける。
川村壱馬
川村壱馬
俺から目ぇそらすのは、なにかやましいことがあるからか?
壱馬くんは低い声でそう言って、私を壁に押しつけた。



いわゆる壁ドンってやつだ……。



それでも今はときめくどころか、びくりと肩を揺らした。
川村壱馬
川村壱馬
……言えよ。なにされた?
白濱(なまえ)
白濱あなた
か、壱馬くん……
川村壱馬
川村壱馬
なに
強い口調のままそう言う。
白濱(なまえ)
白濱あなた
っ……怖いよっ……
鋭い目の中にはいつものように優しさがなくて、私の腕を掴む手も、あとが着きそうなくらい力が込められている。



ただでさえ樹くんの告白で動揺していた心が、壱馬くんの冷たい瞳に射すくめられてきゅっと縮こまるような、そんな感じがして……。



私は壱馬くんの視線から逃れるように、ぎゅっと目をつむった。

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