第4話

6,406
2020/12/11 09:17
次の日。



昨日の出来事を誰かに話したくて、美樹と待ち合わせて少し早めに学校に行き、いつもより静かな教室で打ち明けると。
佐藤美樹
佐藤美樹
えええぇぇぇぇぇええええ!!
と、朝の喧騒に包まれた廊下に負けないくらいの声量で叫ばれて。
佐藤美樹
佐藤美樹
あなた!!なにやってるのよ!?二度とそんなとこ言っちゃダメ!!今回はその男の人が助けてくれたから良かったけど、いなかったらどうするつもりだったの!?
ガミガミと叱られてます……。



こうなるとは思ってたけど。



予想以上にお怒り……。



うぅ……とうつむいていると、美樹はそんな私を見てため息をつく。
佐藤美樹
佐藤美樹
……あんなこともあったし。不良は嫌いでしょう?
白濱(なまえ)
白濱あなた
……うん……
暗い記憶が頭をよぎって思わずうつむく。



そんな私の思考を断ち切るように、美樹が大きなため息をついた。
佐藤美樹
佐藤美樹
はぁぁぁぁ……。とにかく!絶対行っちゃダメ!二度と!!
えー……そんなぁ……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
毎週行ってるのに……。店主のおじさんとも仲良しなんだよ?
佐藤美樹
佐藤美樹
なにそれ!!怪しい人じゃないでしょうねぇ?
白濱(なまえ)
白濱あなた
ち、違うよ!
おじさん、本当に優しいもん。



しかも……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
私の伯父だから
佐藤美樹
佐藤美樹
えええぇぇぇぇぇええええ!!
また絶叫された……。



もう、うるさいよ〜……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
パパのお兄さんなんだ〜
そう言うとまた身を乗り出す美樹。
佐藤美樹
佐藤美樹
伯父さん!?あなたの伯父さん!?しかもお父さんの方の!?どうして古書店!?しかもあんなにガラの悪いところで!?
……言いすぎ。
白濱(なまえ)
白濱あなた
……伯父さん、べつに古書店が本業ってわけじゃないよ
佐藤美樹
佐藤美樹
なんだ、ちょっとホッとした……
もう、早とちりしちゃうところは美樹の数少ない悪い癖だよ……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
伯父さん、元々本好きだったから、ずっと穴場になるような古書店を経営したかったんだって。でも親戚には内緒にしてたみたいで。私が見つけたのは本当に偶然だったの
だから初めて行った時は、伯父さん、びっくりして読んでた本を手から落としちゃってたもんね。
佐藤美樹
佐藤美樹
う、嘘でしょ……。まぁ!でも!ダメだよ!!絶対行っちゃダメ!!
白濱(なまえ)
白濱あなた
え〜……
そんなこと言われたって……。
白濱(なまえ)
白濱あなた
伯父さんもいるし大丈夫だよ……
佐藤美樹
佐藤美樹
ダメ!昨日はどうだったの!?
う、反論できない……。



黙り込んでいると、予鈴が鳴り響いた。



いつの間にか教室は人でいっぱいになっていて、みんなもう自分の席について、あとは先生を待つばかり。
佐藤美樹
佐藤美樹
ああ、もう始まっちゃう。あなた、とにかくダメだからね!じゃあ!!
美樹はそう言うと自分の席に戻っていった。



ひどいよ……。



絶対行くんだを
……だって……1番楽しみにしてることだし……。



小さい頃からパパもママも忙しくて、出張に行ったり、家にいる時でも書斎にこもりきったりと、どこかに連れて行ってもらったり、一緒に遊んだ記憶があまりない。



だけど私を心から愛してくれてるし、いつも私のことを思ってくれてるのは分かってる。



それでも、外出中だけじゃなくて家にいる時も執事やメイドさんに監視されるようになって、さらに縛られた感じになっちゃって……。



まぁ金・土・日は自由だけどね。



初めは『金曜日だけは家に1人にして!』って両親に言った。



それはそれは猛反対されて何ヶ月もバトルしたけど、ついには勝ったんだ。



そしてやっと手に入れた自由。



でも週一じゃ足りなくて……。



しかも……金曜日も、家の周りにはバッチリ警護の人がついて監視されていた。



だからまた猛烈なバトルをして、家に1人にしてもらう日を金・土・日に増やしてもらった。



監視も抜きで。



まぁ、心配症な両親のことだから、隠しカメラとか、何かしらの手段を使って私のことを見守ってるんだろうけど。



ついでに『もうあと数年で大人になるんだから家事をする習慣を身につけたい』と言って、1人で過ごすのにちょうどよい広さの別宅も用意してもらった。



もちろん、社会人になったら費用を返すと約束して。



周りの友達にはやりすぎ……って言われたけど。



私からすれば、監視の方がやりすぎだと思う。



パパやママが心配をしてくれるのは嬉しいんだけど。



もっと……監視なんてなしで普通に暮らしてみたい。



まぁとにかく、そういう1人でくつろげる日には読書がベストで、よって古書店に行くことは欠かせない!



まあ美樹の言うこともわかるんだけどね。



それでも、唯一の私の趣味で、しかも息抜きのできる場所だからここだけは譲れないんだ。



私はため息をついて先生が入ってくるのをまった。

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