次の日。
昨日の出来事を誰かに話したくて、美樹と待ち合わせて少し早めに学校に行き、いつもより静かな教室で打ち明けると。
と、朝の喧騒に包まれた廊下に負けないくらいの声量で叫ばれて。
ガミガミと叱られてます……。
こうなるとは思ってたけど。
予想以上にお怒り……。
うぅ……とうつむいていると、美樹はそんな私を見てため息をつく。
暗い記憶が頭をよぎって思わずうつむく。
そんな私の思考を断ち切るように、美樹が大きなため息をついた。
えー……そんなぁ……。
おじさん、本当に優しいもん。
しかも……。
また絶叫された……。
もう、うるさいよ〜……。
そう言うとまた身を乗り出す美樹。
……言いすぎ。
もう、早とちりしちゃうところは美樹の数少ない悪い癖だよ……。
だから初めて行った時は、伯父さん、びっくりして読んでた本を手から落としちゃってたもんね。
そんなこと言われたって……。
う、反論できない……。
黙り込んでいると、予鈴が鳴り響いた。
いつの間にか教室は人でいっぱいになっていて、みんなもう自分の席について、あとは先生を待つばかり。
美樹はそう言うと自分の席に戻っていった。
ひどいよ……。
絶対行くんだを
……だって……1番楽しみにしてることだし……。
小さい頃からパパもママも忙しくて、出張に行ったり、家にいる時でも書斎にこもりきったりと、どこかに連れて行ってもらったり、一緒に遊んだ記憶があまりない。
だけど私を心から愛してくれてるし、いつも私のことを思ってくれてるのは分かってる。
それでも、外出中だけじゃなくて家にいる時も執事やメイドさんに監視されるようになって、さらに縛られた感じになっちゃって……。
まぁ金・土・日は自由だけどね。
初めは『金曜日だけは家に1人にして!』って両親に言った。
それはそれは猛反対されて何ヶ月もバトルしたけど、ついには勝ったんだ。
そしてやっと手に入れた自由。
でも週一じゃ足りなくて……。
しかも……金曜日も、家の周りにはバッチリ警護の人がついて監視されていた。
だからまた猛烈なバトルをして、家に1人にしてもらう日を金・土・日に増やしてもらった。
監視も抜きで。
まぁ、心配症な両親のことだから、隠しカメラとか、何かしらの手段を使って私のことを見守ってるんだろうけど。
ついでに『もうあと数年で大人になるんだから家事をする習慣を身につけたい』と言って、1人で過ごすのにちょうどよい広さの別宅も用意してもらった。
もちろん、社会人になったら費用を返すと約束して。
周りの友達にはやりすぎ……って言われたけど。
私からすれば、監視の方がやりすぎだと思う。
パパやママが心配をしてくれるのは嬉しいんだけど。
もっと……監視なんてなしで普通に暮らしてみたい。
まぁとにかく、そういう1人でくつろげる日には読書がベストで、よって古書店に行くことは欠かせない!
まあ美樹の言うこともわかるんだけどね。
それでも、唯一の私の趣味で、しかも息抜きのできる場所だからここだけは譲れないんだ。
私はため息をついて先生が入ってくるのをまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。