歩き出したはいいもののさっきからこの会話ばかり。
どうしてか分からないけどなんだか上手く喋れない。
まるで口を縫われたみたいに。
それにさっきから心臓がとても忙しなく動いている。
さっきからこの現象はなんなんだよ。
すっごく盛り上がってる君と対象的な僕。
……釣り合わないなぁ。
そう言って君は僕の顔に手を近づけてむにーっと頬を引っ張った。
そう言って君はふふっと笑った。
君の長いロングの髪が夜風でなびく。
そんな君の姿に反応したのか僕の心臓がドクンっと飛び跳ねた。
この感じやっぱり……
うすうす僕だって分かっていた。
でもやっぱり幽霊だからって思って逃げてしまったんだよな。
この気持ちに。
もちもちと君が僕の頬をつつく。
その瞬間僕の体からボッっと火が出たかのように赤く、熱くなった。
なんだか恋と実感した途端恥ずかしくなって話題を逸らしてしまう。
カップル専用。
その言葉を聞いた瞬間、僕の体がピクリと反応する。
なんだか僕の口から発せられた言葉はカタコトで自分でもなんて言ってるのか分からない。
そんな僕の言葉を無視して彼女は焼きそばを作っている店員さんに声をかける。
こういう営業に慣れているのか店員さんは手を止めて彼女に優しく話しかける。
彼女がその言葉を発した途端僕の体が石化するかのように固まった。
店員さんはニマニマと僕と彼女を交互に見ながら焼きそばを淡々と包装している。
僕は恥ずかしくて縮こまり、君はやってやった!とでも言わんばかりの顔で僕を見ている。
焼きそばの店員さんはふりふりと僕達に手を振る。
悪気は無いんだろうけど凄く気まずいし恥ずかしい。
君はその店員さんに手を振り返す。
それにつられて恥ずかしかったけど僕も小さく手を振った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。