僕が自己紹介をする前に彼女が僕の名前を口にした。
君とは話した事も、ましてや会ったことも無いのに。
君はそう言ってにっこりと笑った。
ちょっと不思議ちゃんのような空気をまとった君。
なんか名前を呼ぶのは恥ずかしくて咄嗟に不思議ちゃんって言ってしまった。
巫女の……子供?
巫女の人じゃなくて?
聞いていた話だと巫女の本人が人を襲うって話だったはずだ。
噂が広がる時に何か手違いがあって噂の内容が変わっちゃったのかな?
そう言って君は首を傾げてみせた。
てっきり噂があるから人がよって来るわけだし、脅かしたくているのかと思ってた。
僕が……初めて?
そんなはずある訳ないだろ。
だって実際に噂が……。
こんな噂がたっているのに誰1人として見にこないなんて……そんな事あるのか?
そう言って君はちょっと困ったような顔をした。
君が幽霊だとしたら未練がある……とか?
ほら、よくあるホラー映画とかの定番のスタイルみたいな。
悲しいはずなのに君は笑顔を崩さない。
そんな君の様子に動揺したのか僕の心臓がドキッと跳ねた……ような気がした。
こんなに可愛い子の事を忘れちゃうなんて。
それに、君はその人が好き……みたいだし。
なんだか聞いていてモヤモヤするというか、なんだか歯痒いよね。
君は僕を見つめながらそう言った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。