第6話

5話
366
2021/08/13 15:00
蝶が鉄格子に止まった瞬間。

パチンっと音がして蝶がガラスのようにパラパラと崩れた。
佐藤 樹
えっ?
そんな事ある訳ないだろ……

僕は目の前で起こったことが理解出来なくて何度も目を擦った。
佐藤 樹
あれ?
周りを見るといつの間にか僕の周りに黒い揚羽蝶が集まってきていた。

ガラスみたいに割れていった揚羽蝶とは違って毒々しい色を放っている。
佐藤 樹
こっちの方に行くの?
ある一羽の揚羽蝶が墓地の奥の方に飛んでいく。

それにつられて他の蝶と共に僕もついて行く。
墓地のはじっこらへんだろうか。

急にひらひらと飛んでいた1羽の蝶がある墓石に止まった。
佐藤 樹
ここが目的地?
墓石に僕は目を向ける。

そしてその瞬間僕は固まった。
佐藤 樹
あ……
 涼風   舞すずかぜ まい

墓石にくっきりと彫られているその名前。

”名前が彫られている墓を見つけてはいけない。”

その言葉が脳裏のうりによぎった。
佐藤 樹
(まさか本当に名前が彫られている墓が
あるなんて)
すると誰かが僕の肩をぽんっと叩いた。

そして僕にこう聞いたんだ。







???
ねぇ、私の事思い出してくれた?

全身が金縛りにあったかのように固まる。

声も出せない。

振り向くことなんてもっと無理で。
佐藤 樹
………
10秒ぐらい時が止まったような気がした。

止まっていた時が動き出したと共に僕の体も自由になる。
佐藤 樹
う、うわぁぁぁ
僕は情けない叫び声をあげて尻もちをついた。

そして僕は噂の巫女さんの姿を捉える。
???
ふふふっ
ねぇ、びっくりした?
巫女装束みこしょうぞくを身にまとった僕と同い年くらいの女の子。

でも、その子は体が宙に浮いていた。
佐藤 樹
君は何者なの……?
何となく噂とは違うな?

と思って僕は逃げずに女の子に話しかけた。
???
うーん……
女の子は僕の顔をまじまじと見つめる。

そして、ちょっと困ったような顔をして言ったんだ。
???
じゃあ、幽霊って事にしとこうかな?
にっこりとしているのにちょっと寂しげな顔で。

……思っていた感じの子じゃないな。
佐藤 樹
あのさ、そういえば君の名前なんて言うの?
名前って大事だよな。

だって名前ってその人が生きている証拠となるものなんだから。
涼風 舞
ワタシの名前は 鈴風   舞すずかぜ   まいだよ!
鈴風 舞。

その名前は巫女装束を身にまとった彼女にぴったりの名前だと思った。

だけどその瞬間君はありえない事を口にしたんだ。

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