まずは自分のお墓に2礼。
パンパンッと後遺症のように響く2拍手の音。
2礼と2拍手を済ませたボクは自分に願いを伝える。
途端にゴォォォーという風が僕の周りを囲んだ。
まるで竜巻の様な感じで。
どんどんと風は強くなっていく。
そしてボクの体は空へと吹き飛ばされてしまった。
ジェットコースターに乗っているかのようか感覚。
ボクは怖くて目を瞑る。
雨がぱらぱらとボクの肩に降ってくる。
揺れがおさまりボクはうっすらと目を開けた。
ボクがいた場所は空中。
下を見下ろすと勿論だけど昨日のような景色ではなかった。
ぐちゃぐちゃになった地面。
原型を留めていないビルや家の数々。
何よりも津波がそれを覆い尽くすかのように押し寄せていた。
そうボクがボヤくとまたシャランと音が聞こえた気がした。
まるでここだよ。とでも言いたげな感じで。
ボクは鈴の音色が聞こえた方向に飛んでいく。
この時ボクは幽霊ってこんな感覚なんだと知った。
ボクは動きを止めた。
だって目の前に君がいるから。
距離は約50メートルほど。
手にはお祓い用の何かと大きな鈴のついた様なものが握られていた。
もちろん服は巫女装束の衣装で。
君が舞を踊る。
その度に手に持っている鈴が鳴り響く。
シャラン。
その音が鳴る度世界が色づいていくような感覚さえした。
現在進行形で起きている出来事に目を見張る。
さっきまで世界をおおっていた津波が引いて。
水死していた人達が何事も無かったかのように動き出す。
ビルも家も全て。
君が色がない世界を創り変えていく。
花火がパァンと打ち上がって、空の色が青色に変わって。
車が動き出して、電灯がついて。
電灯が消えてまた一日が始まる。
でもそれはボク達も同じ。
透明で不透明なボクの手。
君が鈴を鳴らす度に君も僕も色鮮やかになっていく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。