第8話

7話
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2021/08/13 15:00
涼風 舞
興味本位で人のお墓に立ち入るなんて
本当にどうかしてると思うんだけど。
グイッと君は僕に顔を近づける。

まるで僕の本性を見極みきめるかのように。
佐藤 樹
ま、まぁね。
確かに不思議ちゃんの言う通り、勝手に人のお墓に入るなんて人としてどうかしてる。
涼風 舞
じゃあ代償としてワタシの願い、なんでも聞いてくれる?
だ、代償……。

ヒュッっと僕の息を飲む音が響く。

君は幽霊だから、やっぱり……命とか?
佐藤 樹
なんでもって何……?
佐藤 樹
君にとって大切な人を探してくるとか?
人探しならまだ受け入れられる。

お墓に入っただけなのに命と交換だとしたら釣り合わないしな。
涼風 舞
その人を探すのはもう飽きたの。
涼風 舞
だから……ワタシの願いはこれ!
君は自分の手首につけていたブレスレットのような物を自分の手首から外す。

そして、ポイッと僕に手渡した。
佐藤 樹
えっ?
青と白で織りなされている紐に金色の鈴が通されたブレスレット。

数珠とミサンガの間みたいな感じのあれ。
涼風 舞
これ付けてよ!
お揃いにしよ。
そう言って君は巫女装束のポケットから色違いの赤色のブレスレットを取り出した。
佐藤 樹
えっ?
でも、これ君のでしょ?
佐藤 樹
……なんか申し訳ないよ。
手作りみたいなブレスレットだったらともかく、本格的に出来た物だからなんだか貰いずらい。
涼風 舞
いーの!
これはワタシの願い。
そして命令なの!
ビシッと僕に指を突きつける。

そして君は決まった。とでもいうかのようなドヤ顔。
佐藤 樹
そんなに言うんだったらつ、付けるね。
僕はややてこずりながらも左手首にブレスレットを付けた。

すると君はすごく嬉しそうな顔で笑ってくれた。

パッと弾けるサイダーのような笑顔。
涼風 舞
じゃあそれずーっと付けといてね!
ず、ずっと?
佐藤 樹
外しちゃダメなの?
寝る時とか邪魔になっちゃうし、それにお風呂とか濡れちゃうからその時ぐらい外しても……
涼風 舞
ダメ!
これは命令なの。
君はぷくっと頬を膨らませた。

可愛いな……。
佐藤 樹
(あれ?
僕、何考えてんだよ)
だって相手は幽霊だよ?

しかも噂が出来るぐらい有名な。

そんな子に可愛いだなんて……

心のそこに残るなんか嫌なモヤモヤ。
佐藤 樹
じゃあ付けるよ。
心のモヤモヤを無視して僕は君から貰ったブレスレットを手首に付けた。

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