自分の手元を見れば金魚が入っている袋や彼女のりんご飴、さっき買った不透明サイダー。
これ以上遊んだらもう持てないだろ。
彼女の手の中は空っぽ。
だって全て僕が持ってるんだから。
彼女は射的のおばさんにお金を支払って銃を構えた。
銃を構えたま君は僕に問う。
射的の棚に並べられたぬいぐるみやプラモデル。
射的の棚に向かって銃を向ける君は確かにさまになっていた。
1番上の棚においてある可愛い海月の人形。
大きさ的には抱き枕ぐらい……かな?
ニマニマしながら僕を見つめる君。
別に可愛い人形選んだらダメなのかよ!
ニマニマと見つめてくる君の視線がなんだか恥ずかしくて僕はそっぽを向く。
そんな僕なんてお構い無しで君は銃を構えた。
海月のぬいぐるみに狙いを定める君。
そしてバァンっという音が響いた。
こてっと倒れる海月のぬいぐるみ。
自慢げににっこりと笑ってみせた彼女。
彼女はぬいぐるみを嬉しそうにだき抱える。
そして手からそれを手放してポイッっと僕に渡した。
腕の中に納まった海月のぬいぐるみ。
なんだか腕の中にあるそれは懐かしくて、いつまでもだき抱えていられる気がした。
射的のおばさんに銃を返しながら君はそう言う。
頬をぷっと膨らませながら僕はそう講義する。
それに男子が人形だき抱えてても可愛いものなのか?
時計を確認すると9時を回ったところ。
周りにはお祭りに来た人達が沢山いる。
多分この人達も花火を見に来たんだろう。
こんなに人がいたら花火が綺麗に見えるか分かんないからね。
だからこそ速めに花火が見える場所を取っとかないと。
ルンルンと僕の前を歩く君。
その姿はいつ見ても可愛い物だと僕は思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!