第10話

9話
328
2021/08/13 15:00
涼風 舞
ほーらね!
これで一緒に夏祭りに行けるよ〜
君はどうだ!とでも言わんばかりに嬉しそうに笑う。
佐藤 樹
えっ?
本当に行くの?
僕は今更ながらに君と行く事が恥ずかしくなった。

や、やっぱり僕って女子と夏祭りとか初めてだし。

その初めてを幽霊に取られるのか……
涼風 舞
もちろん!
これも命令だからね!
君は当たり前のように、そしてとても嬉しそうにそう言った。

なんだかその明るい笑顔に弱い僕はなんにも言い返せない。

むしろなんだか夏祭りが楽しみで。
佐藤 樹
はいはい。
行けばいいんでしょ。
佐藤 樹
で、待ち合わせは何時で何処にするの?
なんだか嬉しいはずなのに素っ気ない返事しか出来ない。

……もしかして僕、照れてるのか?
佐藤 樹
(いやいや、相手は幽霊だぞ?
恋なんてするはずが……)
涼風 舞
ふーん。
嫌がってた割には意外と積極的じゃん。
何故か君はニマニマと僕を見つめる。

すっごくヤラシイ目で。
佐藤 樹
は、はぁ?
別に積極的じゃないし。
佐藤 樹
君の命令だから聞いてあげてんの。
なんだか変な視線を向けられて僕は戸惑う。
涼風 舞
ん〜
じゃあ待ち合わせ場所は、
この墓地の入口。
いわゆる鉄格子の所ね。
涼風 舞
あと時間、どうする?
私は何時でもOKだよ!
話を進めるのが上手いのか、それともせっかちなのか分からないけれどポンポンと話が進んでく。
佐藤 樹
夏祭りは7時かららしいから、
集合時間は7時半はどう?
早めに行っても最後までいるんだったら疲れちゃうと思うし。

賑わうのは7時半〜8時ぐらいだからそのぐらいの時間が妥当だと思うけど……
涼風 舞
じゃあそうする?
涼風 舞
私は7時半で大丈夫だから。
友達と遊ぶ約束をするってこんな感じなんだな。

僕は陰キャだったから友達を遊びに誘う事なんて無かったし。
佐藤 樹
じゃあ7時半にこの墓地の入口、鉄格子の前でいいの?
涼風 舞
うん!
OKだよ〜
淡々と僕達は約束を交わす。

夏祭りか。

……楽しみだな。
佐藤 樹
じゃあ用が済んだし僕は帰るね。
手を振って僕達はサヨナラをする。
涼風 舞
バイバイ!
またね〜
ギィィと鉄格子を開けて僕は足を踏み出す。

そこにはやっぱりいつも通りの水で染まった世界で。
佐藤 樹
(あと墓地の所、やっぱり何か秘密が
あるのかな。)
それに僕はあの子について何も知らない。

1000年前に起こった地震のことも、全て。

……明日、図書館に行って調べてみようかな。

なんて思いながら僕は家までの帰り道を辿った。

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