第23話

22話
269
2021/08/13 15:00
ふとボクは自分の手を見た。

透明だけど不透明なボクの手。
佐藤 樹
……ッ…ぅ…あ、…ぁあ"
自分は生きていない。

そのショックで頭が可笑しくなりそうで。

遠くから聞こえてくる波の音や雨の音が自分を責めている気がした。

どれだけこの事実を受け止めようとしたって壊れた人形はその重さに耐えきれない。
佐藤 樹
うわあああああああああああああああああああああああッッッ!
僕は壊れかけた世界にただひたすら叫び続ける。

もう誰もボクの声なんか聞こえていないのに。

ポタッと乾ききった地面に涙が落ちる。

もう自分がなんで泣いているのか分からない。


君はボクにたった一つだけウソをついた。

君が幽霊でボクが人間。

そんなウソを。
佐藤 樹
……あ"ぁ…うっ…
口から漏れる嗚咽の様な汚い声が辺りに響く。


ボクは周りなんて気にせずにただただ泣きじゃくった。

まるで、生まれたばかりの赤子みたいに。


本当はきっと分かっていたんだ。

自分が幽霊だと。

それでも何処か信じれないボクが居て。

そんな彼女の優しさにあまえてしまっていた。

好きという曖昧な感情に区切りをつけなかった。

君と一緒に入れるならそれでいいって思った。

幽霊だから、人間だから。

そんなの関係ないのにそうやって現実から逃げた。

ボクは、

君の笑顔をずっと隣で見ていたかった。
────────────────────────
ただひたすらボクは泣いた。
佐藤 樹
……っ"……!
涙が切れるまで。

のっそりと僕は立ち上がる。

足元を見ると自分の足が地面から少し浮いていた。
佐藤 樹
彼女を探しに行かなきゃ……
心も体もボロボロな僕でも君といたい。

強欲だけど。
佐藤 樹
あれ?
脳内で巡らせていた彼女との思い出。

とある出来事が僕の頭の中で引っかかった。

彼女が言った、

「やっぱり人と幽霊って違うんだなぁっと思って。」

という言葉。
佐藤 樹
ボクは幽霊だった。
それじゃあその言葉通りでいくと、彼女が人間って事になるんじゃない?
でもそうすると君と出会った時は彼女は幽霊だったはずだ。

だって浮いていたし体が透けていたから。

でも君は人間になれた。

どこにでもいるような普通の女の子に。
佐藤 樹
人にもなれて、幽霊にもなれる……?
てか、そんな生き物いるのかよ。

そんな生き物がいたとすれば世界が狂って……?
佐藤 樹
確か書かれてあったよね?
人間にもなれて幽霊にもなれる生き物。
図書館で借りた本には名前は書かれていたけど、内容は書かれていなかったあれ。
佐藤 樹
もしかして半幽霊……?
もしそうだとしたらあの最初の方に読んだオカルト本の話も本当に……?

確か神様が990年後に少女を送るって奴だったよな?
佐藤 樹
その特別な力を持った少女ってまさか…
彼女の事だったのか?

神様がいう力とは半幽霊の事。

もしそうだとしたら……
佐藤 樹
まだ世界を救えるかもしれない。

プリ小説オーディオドラマ