帰っていいとは言われたものの、実際そうは行かない。担任だからと思うけど、学校案内って廉先生がしなくちゃいけないのかな。とか放課後に2人で校内まわるとか羨ましいなってそれしか出てこない。
私はコソコソと物陰に隠れて学校をまわる2人を尾行した。
嫌な予感がしたらすぐに飛び出して行ってやる…。そう心に決めながら、教室の場所や移動教室で使う場所など、至って普通に校内を案内していた。2人が図書室に入ると廉先生が窓の締め忘れに気づいて閉めようとしたら、強い風が吹いた。
廉先生の髪が乱れて
気づけばそう声に出していた。でもそれは私だけじゃなくて、美蘭ちゃんも手を口に当てて小さく笑っていた。
…なにそれ、ずるい。そんな可愛く、先生の前で笑わないで。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!