第11話

10話
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2021/10/18 14:08



「いつか、あなたと一緒に、全国へ行く。」



「それが、今の俺の目標。」
あなた
……



東峰先輩は、僕に呆れてなかった。



それどころか、一緒に全国へ行くことが目標と言ってくれた。
あなた
あ、こいつのご飯買わなきゃ



下を見ると、こいつは機嫌が良さそうに歩いている。



いいなぁ、呑気で。



僕は、俯きながら、夕焼けの綺麗な帰り道を歩き始めた。
あなた
……

.

.

.
あなた
ちょっと外で待っててね
にゃ!



坂ノ下商店という店の前に猫を待たせ、僕は店内へ入った。
烏養繋心
らっしゃーい



見覚えのあるようなないようなお店の店員さんを横目に、店の奥へと向かう。



奥の棚の猫用の缶詰めを手に取り、レジへと向かった。
あなた
お願いします
烏養繋心
はいよ



ポケットから財布を取り出し、1000円札をトレーの上に置く。
烏養繋心
……あんた、烏野の生徒だよな?
あなた
あなた
一応……
烏養繋心
へぇ……
烏養繋心
何部?
あなた
帰宅部です



なんでこんな質問をするんだろう……?
烏養繋心
……もったいねえなぁ
あなた
烏養繋心
あ、ほら、お釣りと商品
あなた
ありがとうございます



軽くお辞儀をし、お釣りと商品を受け取ったあと、店員さんに背を向けた。



あいつ、ちゃんとお利口に待ってるかな?
烏養繋心
……なぁ
あなた
はい?
烏養繋心
バレー、興味ねえか?
あなた
……バレー……ですか?



……一日でこんなにバレーって単語を聞いたのは久しぶりだ。



でも、なんでこの店員さんがバレーの話を持ちかけるんだろう。
烏養繋心
まあ興味ねえならいいんだが……
烏養繋心
お前みたいな奴が帰宅部はちょっともったいねえなと思って



もったいない……か。
あなた
……
あなた
なんでですか?
烏養繋心
ん?
あなた
僕、背そんなに高くないですし、どうみたってバレーに不向きでは?



……なんか自分で自分に言うのやだな……。



なぜかこのとき嫌だと感じたのは、背が低いという部分ではなく



バレーに不向きという部分だった。
烏養繋心
いや、別に身長は問題ない



身長は問題ない……?



どう考えたって、バレーに低身長な奴は不向きだし、戦う上での足枷あしかせにもなる。
烏養繋心
飛べれば十分
あなた
僕は……跳べないので
あなた
……あの、帰っていいですか?
烏養繋心
ああ、引き止めて悪ぃな
あなた
いえ
あなた
それでは



なんだったんだろうと不思議に思いつつ、店を出る。
にゃー



すると早速、こいつが擦り寄ってきた。
あなた
よく待てたね
あなた
偉い偉い
にゃ!
あなた
じゃあ帰ろうか

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