田中たちと別れ、僕は正面玄関から出ようとしていた。
最近運動してないし。
公園に練習にでも行くかな……?
上履きと外履きを交換し、外に出る。
猫はこっちに気づくと、自分から擦り寄ってきた。
頭を撫でると、楽しそうに「ニャー」と声を出した。
顎のほうを撫でようとすると、首輪をしていないことに気づいた。
……野良かな?
学校の敷地に入ってくるんだもんな。
野良でも違和感はないか。
返事をするように、猫は僕に飛びついてきた。
なんかドヤ顔してるように見えるのは気のせいだろうか。
ふと後ろから声が聞き覚えのある聞こえた。
この声……
そう言い振り向くと、やはり東峰先輩がいた。
東峰先輩が微笑む。
東峰先輩と一対一で話すの……何ヶ月ぶりだろう。
……まあ僕には怒られる権利もない、か。
これは失望されたかなぁ……。
東峰先輩が……逃げた?
そんなこと……そんなことない。
いざというときすごく頼りになる……エースじゃないですか。
東峰先輩は、それから何も言わず、しばらくの間沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、僕の足元にいたこいつだった。
そうして、東峰先輩は僕に背を向けた。
その背中は、とても大きくて、頼もしくて、
そして、どこか寂しそうだった。
僕は、何も言うことが出来なかった。
僕は、どうするべきなんだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。