…さ…流石に…疲れた…。
大丈夫ですか?
うん。…でも…本当に良かった。
あなたは微かに聞こえる喜びの声に耳を傾けながら言った。
あなた様なら…この本丸もきっと…変われる気がします。
そうかな?…流石の私も…少し、自信なくしそうだよ?
あなたは笑いながらこんのすけを撫でながら言った。
あなた様…少しでもお休みになられた方がよろしいのでは?
そうね。…少しだけ…休もうかな…。
あなたはそう言って、縁側に座り、柱に身体を預ける。
此処でお休みになられるのですか!?
うん。…もう少し…聞いていたいの。…あの…声を。…こんのすけ、膝に来てちょうだい。
わかりました。
こんのすけはあなたの膝の上に座り、あなたはこんのすけのぬくもりを感じながら、喜びの声に耳を傾け、静かに目を閉じた。
* * *
(寝ているのか?)
鶴丸はあなたの部屋に来て、縁側に座るあなたの元へと行く。
んぅ?…あ、鶴丸様。
よっ!主に礼を言いに来たんだが…寝ているようだな。
流石に、お疲れのようです。
…だそうだ。どうする?
…起きるまで…此処で待つよ。
そうだね。
加州様、大和守様。お身体の方はもうよろしいのですか?
うん。主のおかげで…。
…この部屋…こんな感じだったっけ?
だいぶ様変わりしただろ。全部、新調したそうだ。
そう言う鶴丸の先には、今までとは違い、明るく、綺麗になった審神者部屋が広がっていた。
なんか…今のこの部屋なら…来やすいかも。
そうだろう。…俺も小夜も…一期たちも…主を信じる奴らは皆、此処で楽しそうに過ごすようになったぞ。
鶴丸は笑いながら言った。
そうなんだ…。
君らはこれからどうするんだ?
…人間なんて…嫌いだよ。…でも…俺は…誰かに…愛してもらいたいんだ。
主なら…僕たちを…見捨てないかな?
そうだな。…主なら見捨てないさ。
…ん‥んぅ。
お!起きたかい?
…鶴丸?…んー!少し、すっきりした。
あなたは加州たちに気づかずに、伸びをしながら言った。
主…。
…!あ…加州様、大和守様。
はは”やはり気づいていなかったか。
それに気づいているなら…言ってよ…。鶴丸ー。
君に話があるようだ。
…話?…これは失礼しました。どうされましたか?
…あの…さ…主は…俺のこと愛してくれる?
愛する…ですか?…どうでしょうね…。
え?
主は…愛してくれないの?
いえ。そういうわけではありません。…うーん…何と言えばいいのでしょうか…。愛すると一言に言っても…私には難しいものがありますね。…加州様や大和守様にとって…どうしたら愛するという事になりますか?
え?…俺を可愛がってくれるとか…?
見捨てないとか?
なるほど…。情けない話…私は…愛というものを…あまりよく知りません。
知らない?
はい。…ですが…私は…貴方方を見捨てるつもりはありません。今は…それでよろしいですか?
…。
君は…変わってるね。
ふふ。私は普通の人間ではありませんから。
変なの。
ふふ。さて、貴方方に一つお伝えしたいことがあります。
ん?
…私の真名をお伝えしますね。
は?
ちょ…真名って!!
それ…俺たちに教えちゃいけないやつじゃ…!!
そうですね。ですが…すでに、鶴丸をはじめとする一部の刀剣たちにはお伝えしています。
なんで?
審神者としての覚悟だそうだ。
仲間の刀剣たちに手を出すようなことがあったとき…お使いください。私は…貴方方を言霊で縛ることができる。なら…貴方方にもそれ相応のものが必要でしょう。
やっぱり君は変わってるね。
そうかもしれませんね。…では、私の真名を。…私は桜木 あなたと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
えーっと…俺は、加州清光。扱いにくいけど…性能はいいからさ。…えっと…よろしく?
僕は大和守安定。よろしく。
はい。よろしくお願いいたします。
ねぇ、俺のことは清光って呼んでよ。あと…敬語も無し。
あ、清光だけずるい!僕も!!
(これは…また…緊迫感がなくなって…随分と雰囲気が変わったわね。)ふふ。では、清光、安定と呼ばせてもらうね。
あなたは笑いながら言い合う2振りを撫でて言う。
まだまだ…未熟だけど…必ず、皆を笑顔にさせてみせるから。
その目標は達成するまでの道のりが長そうだな。
う…それは言わないでよー。
ま、あなたのすることに文句は言わんさ。…仲間たちを救ってくれるならな。
清光、安定。とりあえず、一つだけ。…勝手に時空転移装置を使っちゃだめだからね。
う…。
はーい。
あなたの言葉にバツの悪そうな顔で返事をする2振りにあなたと鶴丸は顔を見合わせて笑った。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。