『治、どこ見てんの』
『えっ』
治は最近やけに廊下に行きたがる
女がうるさいから
集中して話ができないなんて
前まで言ってなかったじゃん
やっぱり双子って似てる
治も素直にならない人だなと思う
『治』
『なに?』
『そろそろ素直になれば』
俺がそう言うと
治は図星をつかれた顔をした
『・・・素直になるってなにに言っとん』
『あなたちゃんに対して』
『はっ、なんで今大原さんが出てくるん』
隠し通せると思っているんだと思うけど
バレバレなんだよ、治は
その様子を見る俺がもどかしいわ
『治、好きなんでしょ』
『・・・なにがやねん』
『あなたちゃんが』
治は一瞬目を見開いて目をそらす
『それは侑の話ちゃうん』
『治に言ってる』
治はまたさっきと同じほうを向いて口を開いた
『なんかどう話せばええかわかんなくなったねん』
『なんで』
『なんかすぐ期待してまうねん』
『笑顔で話してくれるだけでもしかしたらって思ってまうし』
『ほんまはそんな事ないってあの二人見たらわかるのに』
治は酷く切ない声でボソッとそう言った
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。