『はい、こっちもってや』
『・・・うん、わかった』
それほど意識されていなかったということか
私とついこの前、あんなことがあったのに
全く気にしていないようだ
むしろ忘れとるん?ってくらいな態度で
私に話しかけてくる
「「あ」」
そんな考えごとをしながら
作業していたら
治くんの手に私の手が被ってしまった
『・・・ごっめ・・・ん』
治くんの手の温かさを感じて
途端に顔が赤くなる
こんなの好きってバレバレになるやんか
『俺が何でペア誘ったんか分かるか』
『えっ』
私が分かりやすく動揺しているところに
治くんは話しかけてきた
『・・・仲いいから・・・とかかな?』
顔見れんなぁ
目線を向けなくとも
私を見る治くんがぼんやりと写る
『・・・ほんま鈍感やなぁ』
『え・・・っ?』
そんなセリフを言う治くんの顔を
思わず見れば
治くんは熱っぽい瞳で私を見ていた
『やっとこっち向いたやん』
いつも表情を変えない治くんの頬が
少しだけ赤くなっているような気がして
私もホワッと顔が赤くなった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。