第112話

表情
3,716
2020/11/20 01:28





『はい、こっちもってや』






『・・・うん、わかった』









それほど意識されていなかったということか







私とついこの前、あんなことがあったのに

全く気にしていないようだ




むしろ忘れとるん?ってくらいな態度で

私に話しかけてくる










「「あ」」











そんな考えごとをしながら

作業していたら

治くんの手に私の手が被ってしまった









『・・・ごっめ・・・ん』









治くんの手の温かさを感じて

途端に顔が赤くなる









こんなの好きってバレバレになるやんか










『俺が何でペア誘ったんか分かるか』





『えっ』









私が分かりやすく動揺しているところに

治くんは話しかけてきた










『・・・仲いいから・・・とかかな?』











顔見れんなぁ





目線を向けなくとも

私を見る治くんがぼんやりと写る














『・・・ほんま鈍感やなぁ』








『え・・・っ?』











そんなセリフを言う治くんの顔を

思わず見れば

治くんは熱っぽい瞳で私を見ていた











『やっとこっち向いたやん』










いつも表情を変えない治くんの頬が

少しだけ赤くなっているような気がして

私もホワッと顔が赤くなった











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