今頃
侑とあなたは映画でも見とる頃かな
たかが侑のことで
こんな気にする自分が馬鹿馬鹿しい
『治、行こ』
『行こか』
侑たちは映画に行っとるけど
奇遇やな
俺もこれから映画を見に行くんや
「この映画めっちゃ面白いんだって」
「そうなんや」
角名が映画に誘ってきたから
せっかくのオフやし暇だからええかなって思って
角名と銀島と三人で映画を見に来たのだ
(ま、同じ映画館なんてあるわけないか)
『え、あれ侑じゃない?』
そんなことはあった
出くわすなんてあるはずないと思っていた
しかも見る映画も同じだ
(奇跡的すぎやろ・・・)
「ま、ほっといてあげよ」
「そうやな」
俺たちは後ろの席で
侑と原山さんは前の席に座っとる
「めっちゃ激アツじゃん」
「彼女とか?」
「それはない」
「めっちゃ否定するやん」
原山さんが侑の彼女なんて言われるんが
なんか嫌やったから
全力で否定してやった
でもなんだか甘い雰囲気だったのは
認めざるを得なかった
映画の予告中も二人で喋っとる
侑はともかく原山さんも笑顔で
その笑顔が無駄に心を痛くする
映画なんて全く集中できんかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。