第40話

これは私の特権
及「はい、俺の奢り〜」

そうにこやかに笑う徹の右手と左手には

麦茶がそれぞれ握られていた

……女子の扱いが慣れてる



『ありがと笑』

私は左手の麦茶の方を取ると

徹は流れるように私の隣に座る




それから私たちは他愛ない話をお互いにし合う


徹の幼なじみがいつも殴ってくることとか
中学も一緒だった後輩のサボり癖が抜けないとか
今日のお昼は牛乳パンと焼きそばパン食べたとか

私も部活の話や後輩が可愛いとかまあ色々話した


私が話をする度に、うんうんと頷く徹は

やっぱり女子の扱いに慣れてるんだろうなって思う



『こんなとこ、及川ファンに見られたら殺される』

半分冗談で半分本気の言葉を投げかけると


及「あはは、なにそれ〜」

と言ってクシャッとした顔で笑ってくれる







初めて会ったのは高2の修学旅行


そして2回目が今日







誰かに言われなくてもわかる




"私は徹のことをほとんど知らない"





『私たちさ、こんな感じで話してるけど会うの2回目って相当ヤバいよね笑』


及「確かに、それも初めて会った時あなたは風邪ひいてたしなー、実際ちゃんと話すのは初?笑」

そう言って首を傾げながら私を見てくるのはずるい


『うん、初めてだね。』


その瞳から逃げるようにフッと顔を逸らす



及「でもこうやってあなたと話してると全然初めてって感じしないよなー、それなりに連絡取り合ってたからかなー、?」




いつのまにか呼び捨てで呼ばれてた名前

前まではあなたちゃんだったのに

流れるような行動に違和感を感じさせない

やっぱり扱い方がうまい




徹の中で私は










倒れてたから助けた同い年








こんな他愛ない話は及川ファンの子たちにもしてるんだろうか

学校でもこんな感じでみんなに分け隔てなく接しているのだろうか

初めてな感じがしないって、みんなに言ってるのだろうか







及「もうそろそろ時間だね、送るよ」

そう言って徹はゆっくりと立ち上がったので


私もつられて立ち上がる




まだ飲みかけの麦茶から水滴が落ちる










私は心の中にある違和感を押し潰すように


麦茶を一気に飲み干した