――同棲開始3週間前
話したいこと、は
きっとあの話なんだろうなって わかった
こんな 前置きをして
ゆっくり話したい、なんて
言ってる時点で
やっぱり
同棲なんて認められなかったんだってことも
勘づいた
なんとなく
ほっとしたような
ちょっぴり
残念なような
つくづく私って、
勝手だなぁ……
ちょうど、次の休みは明後日
明日の仕事終わりから
グクのおうちへお泊まりをすることに決めて
この日の電話は終えた
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グクのやさしさは
最初から 何も変わらない
扉は開けていてくれるし
荷物は必ず持ってくれる
私の歩調に合わせながら
隣を一緒に歩いてくれる
いつだって 私にやさしくて
いつだって 私のこと…見透かしてる
思い入れのあるものは、
持ってきていいよって
そう言ってくれるやさしさが
大好きだよ
だって
ベッドだって ソファだって
この家には必要ないのに
私が持ってきたところで
邪魔になるだけなのに
大きな物は 処分するから
身の回りの物だけ持って
わたし、ここに―――…
本当に、いいのかな……
…筋を通すために
どれだけのことを してくれたの?
" 1週間かかったけど " って
その 1週間の間
どれだけの人たちに どれだけ
頭を下げてくれたんだろう…
本当なら
許されることじゃなかったはず
覆したのは
グクが必死で
会社に頼み込んでくれたんだよね…?
泣いてる本当の理由
絶対にわかってるはずなのに
あえてそこには触れずに
茶目っ気たっぷり
そんなことを言うグクの
胸の中に飛び込んだ
もしかして私、もう
グクに捕らえられて
離れられないのかもしれない
それくらいに
あいしてる……し、
あいしてくれてるってこと、
いつも 感じられるから
ずっと ずっと
一緒にいたいから
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。