――同棲開始2週間前
グクの会社から
同棲のお許しをもらってから 更に1週間
今日は なんと
私の実家にグクがいる っていう
一見したら、奇妙な状況
隣で深呼吸をしているグクのことを
チラッと見上げてみると
パチッ
私の視線に すぐに気がついて
目が合ってしまった
一緒に暮らそうって言ってくれて
会社を説得して許可を得て
私の両親にも許可を得るために
わざわざ遠くまで一緒に来てくれたグク
同棲をするためには
当たり前のことかもしれないけど
現役のアイドルがそれをやってくれるのは
きっと、当たり前のことじゃなくて
すっごく 特別なことなんだって
そんな風に考えたら
頬が熱く火照ってくるのを感じた
今までに聞いたこともないくらい
あまりにも丁寧な物言いをするグクに
びっくりして
彼のことをまた見上げてしまった
真っ直ぐに
アッパのことを見つめて
真剣な眼差しを向けているその視線が
チラッと一瞬
私に移って
びっくりしてる私の心の中なんて
見透かしてるようなことを言うから
さらにびっくりして 笑っちゃった
オンマが
トレーに4人分の飲み物を載せて運びながら
にこやかに
グクに声をかけた
私が説明しようとしたのを
グクが 静かな視線で制止した
前もって
彼に言われていたことがある
こんなに誠実で
こんなに頼りになるんだって
そんな人が
私の恋人なんだって
なんだか 目頭が熱くなった
私の隣で
今回の事の顛末を
アッパとオンマに説明してくれてるグク
オンマには
私からも電話で伝えていたから
にこにこ微笑みながら
話を聞いてくれていて
アッパにも
オンマから予め
このことは伝わってるはず…だけど
一向に崩れない、険しい表情
もしかして……だめ?
娘の同棲なんて許せないって思う父親だった?
なんて
私は的はずれなことを考えてたんだ
アッパは……
グクの話を聞きながら
見定めていたんだよね
彼のことを
オンマが
急に私に手伝ってって言いながら
キッチンへと私のことを呼んだ
オンマが笑いながら そんなことを言うから
なんだか可笑しくて
打ち解けてる2人?
そうなってたら……うれしいけど
オンマが焼いてくれたケーキをカットして
リビングへと運んだら
本当に2人は 打ち解けたみたいで
グクは笑顔で
アッパと会話をしていて
アッパも
なんて、
普通に名前 呼んじゃってる
会社といい うちといい
一体どんな魔法、使ったの?
ケーキをみんなの前に配り終えて
私がグクの隣に腰掛けたら
うまくいったんだなって
私の助け舟なんて
全然 必要ないくらいに
グクが グクの言葉で
彼なりの考えをしっかり
アッパと話してくれたんだってことに
胸がいっぱいになった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!