『ふぅ……、久しぶりにバレーすると気持ち〜!』
黒「いやいや、お嬢サン。」
赤「あなたさん……。」
木「あなたっっ!!!
お前すげぇーー!!!!!」
頭を撫でてくれる木兎。
だが、力が強すぎて首があちこち向いている。
『木兎、首痛い。』
木「お前すごいな!!」
『いや、こんなの序の口だから。』
黒「序の口で木兎の強烈サーブ取るなんてやっくんレベルだろ。」
赤「セッターなのにレシーブ完璧じゃないですか。」
『ちょっと、一斉に話さないで。
私の事はいいから、練習しよう。IH近いんだよ。』
赤葦が持っていたボールを無理やり奪い、サーブラインに立つ。
手の中でボールを回し深呼吸をする。
久しぶりにバレーに触れる。
久しぶりにバレーが出来る。
こんなに楽しいことなんてない。
片手でボールを高く上げ、走って勢いをつける。
黒「え、もしかしてアイツっ!?」
赤「嘘……。」
木「うぉぉぉぉぉ、あなたすげぇぇ!!」
最高の打点。
『ここだ。』
バンッ!
自分が思い描いたように綺麗に相手のコートに入っていく。
サービスエースで決めようとは思っていない。
『……乱れればいいんだ。』
木兎がボールを取ったが見事に乱れて、こっちのコースに入ってくる。
『黒尾、私が上げる!』
黒「キレイに上げてくださいよ。」
『あったりまえ!』
来たボールを黒尾が拾い上げ私にくれる。
さぁ久々に本領発揮と行きましょうか。
黒尾が打ちやすい位置。
確実に決まる位置。
よし。
ここだ。
飛んだ黒尾にトスを上げる。
ボールが行った位置はドンピシャ。
バンッと黒尾が打った。
これまた私が思った通り綺麗に入っていく。
『よっしゃ。』
自分が描いた通りに行ったこの瞬間が大好きだ。
やっぱりセッターが好き。
『黒尾、ナイスアタックー!』
黒「いや、あなたのトス打ちやすっっ!!」
ハイタッチをしていると、木兎が私の名前を呼んだ。
木「あなた!次はこっちが決めるからな!!」
赤「もう、女だからという手加減はいりませんね。」
『え、手加減してたの!?』
黒「その割には木兎の一発目のサーブはガチだったけどな。」
『か弱い女の子にそれはなかったよねーー。』
「「「どこがか弱いの?」」」
『お前ら逮捕ー。』
なんだかんだ言って時間はあっという間に過ぎて…。
『ありゃぁ…もう18時だよ。』
木「腹減ったーーーー」
『たしかにお腹空いたよねー。』
私の場合歯医者終わってからそのまま来ており、昼から何も食べていないので、お腹ぺこぺこだ。
黒「ならラスト打ってお終いにしますか。」
赤「そうですね。」
木「なーなー!終わったらラーメン食いに行こ!」
『えーー、ラーメン?
私今パスタの気分。』
木「いやいやラーメンだろ!!
な!赤葦!」
赤「別に俺はどっちでもいいですけど。」
『ほら、そう言ってるんだしここはレディーファーストって事でパスタだよね!
ね!黒尾!』
黒「俺はどっちでもー。」
木「よし、ラーメン決定だな!」
『いや、まだ決まったわけじゃないし!!
あ、そーだ!木兎が奢ってくれるならラーメンでいいよ!』
木「え…俺金け___」
赤葦「木兎さんが奢ってくれるそうなので今日はラーメンにしましょう。あなたさん。」
そう言って木兎の肩に手を置く赤葦。
木「だめだ、奢ってやりたいのは山々だけど…。
今月あと2000円で乗り切らなきゃならねーんだ!だから!!」
黒「学生ラーメンなら学割で500円で行けるけど。」
『4人ちょうどで2000円!!』
木「いや、それ使ったら俺の今月のお小遣いが0になる!!」
ダメだっと言い続ける木兎。
こうなったら意地でも奢ってもらわなきゃでしょ。((
『……そっか…。
とっても残念だなぁ…。』
木「え、あなた…?」
木兎から背を向けた。
そして持っていたタオルを目元に当てる。
『木兎は将来バレーで大活躍して…。』
木「((ピクッ」
単細胞の木兎はこう言う言葉に弱いと言う事を練習試合を通して知った。
それを試合だけではなくプライベートでも有利に使わないと。
『日本を背負うプレイヤーになって…。』
木「((ピクピクッ」
『エースになるんだもん。
こんな小さな事で悩んだらダメだよ!
エースは悩まずにすぐに動かなきゃ!!』
振り返って熱く語ると木兎は自分の掌を見てじっくり考えながらボソッと呟いた。
木「…エース…。」
と。
『そう!将来、日本を背負う大エース!』
木「エース…。」
『木兎なら世界的エースも夢じゃない!!』
木「…」
『木兎大エースっ!!!』
木「へいへいへいへい!!!
今日は俺の奢りって事でたっくさん食べていいからな!!」
いつもより調子がいい木兎に元通り。
これで奢ってもらえる。
今月ピンチの私はとても助かった。
『よ、大エース!日本のエースは言うこと違うね!』
木「もっと言って、もっと言って!!」
『エースっ!きゃー!カッコいいー!』
木「だろだろ!!」
『木兎様のサーブみたい!』
木「よし!やるからよく見てろよ!!アカアーシ、ボール!!」
赤「黒尾さん。」
黒「はーい。」
赤「彼女さん、本職学生じゃなくて詐欺師ですよね。」
黒「いやー赤葦クン。ちょーどソレ俺も思ってたところだわ。」
★良い子も悪い子もお友達引っ掛けちゃダメだよ★
木兎ファンの方すみませんでしたぁぁぁぁぁあ!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。