昼休み
パカッと膝の上でお弁当を開ける。
待ちに待ったお昼。
「今日〜の〜お弁当は〜」
夜「お、オムライス。」
「朝から頑張っちゃったよ。」
黒「美味そーだな。」
「あげませんよ。」
私のお昼は基本、屋上で黒尾とやっくんと海とお昼ご飯を一緒に食べる。
女友達がいない訳では無い。
ただ単に仲のいい女友達とお昼を食べると話の内容が愚痴になり、聞いててあまり楽しくないからだ。
今日は快晴であり外に出ても全く寒くない。
春の暖かい風が吹いている。
「ふっふふ~ん〜」
海「なんだか今日は楽しそうだなあなた。」
そして私の気分も良い。
黒「今日は一日中、このテンションなのあなたチャン。」
夜「ずっと鼻歌歌ってるよな。」
同じクラスである黒尾とやっくんは朝から鼻歌を歌っている私を見ては多少顔が引き攣っていた。
黒「なーにがあった?」
「なんだと思う?」
フェンスに寄りかかりながら仲良く4人並んでいる私達。
横にいる黒尾が私のお弁当の中身を覗き込む。
黒「オムライスが綺麗に出来たとか?」
「そんなのでテンション高いとかアホだよ〜」
黒「そんなアホがあなたチャンです。」
「そんな酷いことを言った黒尾クンには〜……」
いただき!
と言って黒尾のお弁当から卵焼きを横取りする。
一口でパクッと食べた。
黒「あ、お前!」
「やっぱり美味しいね〜黒尾のおばあちゃん、手料理上手。」
自分で作る卵焼きは基本味付けが薄かったり濃いかったり、味にバラツキがある。
綺麗に卵焼気を作ることも出来ない。
それに比べて黒尾家の卵焼きは綺麗に焼けており、ダシの味がふんわり効いてとても美味しい。
「卵焼きは黒尾なんかより私に食べられたいって。」
黒「誰が言ったんデスかー」
「やっくん。」
夜「カップルのイチャイチャ最中に俺を巻き込むな。
というわけで俺も。」
やっくんも黒尾のお弁当から卵焼きを取り食べた。
お前ら何?俺の卵焼きに恨みでもあんの?
とブツブツ言っている黒尾。
やっくんはやっくんで黒尾の卵焼きの味に感動している。
海「で、何があったんだ?」
「あ、実はね今日……」
“朝から告白されました!”
屋上で響き渡る私の声。
「「「は……?」」」
黒尾の箸からころっと転がるミートボール。
響き渡り終えると鳥の鳴く音音しか聞こえない屋上。
みんな私の顔を見て黙り込む。
「ってのは嘘で。」
夜「嘘かい!!」
海「本当かと思ったぞ。」
黒「お前のせいで俺のミートボール落としてしまったじゃねぇーか!」
「私のせいじゃないでーす。
つーか、モテないのにそんな訳ないでしょ。黒尾に好かれるだけで充分よ。」
スプーンでオムライスを食べる。
卵焼きを作るのが下手な自分であっても、今日のオムライスは美味しい。
「あのね、今朝……。」
みんなが私を見て唾を飲み込むのがわかった。
そんなに重い話ではないのになと思う。
ただの報告。
“ただの”
「なんと、ゴールデンウィークに宮城に帰れることになったの!!」
「「「…。」」」
「1月ぶりにおじいちゃんと再会!
楽しみだなぁ〜!」
__ただの報告なの。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。