第7話

〈春〉 じゃじゃ馬姫①
10,055
2020/04/18 06:44
翌日


いつも通りに部活が始まり、私はマネージャー業をこなしていた。

マネージャーは私だけなのでドリンクを作ったり、スコアを書いたりするのも全て自分でする。

面倒くさくて正直だるいと思う時もある仕事だが、中学校の頃からマネージャー業をしているので別に辞めたいほどではない。

それに、みんなの頑張ってる姿を見ると、自分のだるいとか言う気持ちは自然に消える。

部活が始まって1時間半近く。

みんなの集中力や体力(1人覗いて)切れずに続いているので毎回凄いなぁと感心する。


黒「集合!」


直井コーチが来たので黒尾が集合をかけた。

黒尾の声を聞き、直井コーチの前で3年生、2年生、1年の順で横に並び挨拶をする。

猫又監督は今日、病院があるということで来ていない。

さっき黒尾が教えてくれた。


直「今年のゴールデンウィークの最終日に練習試合決まったからな。」


と、言う直井コーチ。


リ「練習試合!」

山「どことっすか!?」


直井コーチの隣に立っていて何となく、

何となく“嫌な”予感がした。


直「それが宮城の…」

「げっ……。」

直「烏養、どうした?」

「い、いや。なにもないです……。」

黒「ぶっひゃひゃひゃ笑」


目の前で爆笑している黒尾を睨み付ける。

私が宮城という言葉に反応したのに気づき、黒尾の左右では他に海ややっくんも笑っていた。


……後でぶっ倒してやる。

そしてコーチから放たれる言葉。


直「相手は宮城の公立高校、烏野高校だ。」

「……。」


嫌な予感が的中し、黙るしかなかった。

音駒にいて“宮城”というキーワードが出できたら烏野しかいない。

何故なら烏野とは昔からライバル校として交流があったからだ。

近所の人達からは「ゴミ捨て場の決戦」と親しまれていた。

以前烏野で監督をしていたおじいちゃんは猫又監督と全国で闘う約束をしていた。

と、おじいちゃんから直接聞いた。

残念ながらその夢は叶えられなかったが。


直「練習試合に備えて色々準備しとくように。」

「「「はい!」」」


私の事を知っている3年以外のみんなはいつもより元気のいい返事をし、一旦解散。

3年の男3人は解散したと同時に大爆笑。


黒「ぶっひゃひゃひゃ爆笑
宮城!」

夜「ゴールデンウィーク!爆笑」

海「っ笑笑」

「お前ら……。」


腹を抱えて笑う3人に殺気が湧き上がる。


夜「烏養も宮城、俺達も宮城。」

黒「とー言うわけでー。」

「「「宮城でもマネージャーよろしくお願いしますー。」」」


3人揃って私に頭を下げた。

その姿を見て、殺気を湧かせるのも怒鳴りつけるのもやめる。


「はぁ……。」


とため息。

こいつらに呆れた。

部活を休むと昨日言ったばかりなのに、マネージャーをやれと頼むのか。


「本当、お前ら私の事好きだな!!」

黒「それほどあなたの存在は大きいってことデース。」

「あっそ!!」


もはや自棄で答える。

部活に参加するなら、宮城で丸1日友達とは遊べないことは確定した。

だからこそ言い方が乱暴になる。


黒「あなたの喝がないとなかなか調子出ないし。」

夜「練習試合や試合には烏養のアドバイスがないと。」

海「それにドリンクの作り方とか忘れたしな。」

夜「あー確かに。」

黒「居ないとスコアとか分かんねーから困るんだよな。」


全く、私がいないと何にも出来ない奴らだ。


「マネージャー業するから、いくら練習試合とは言え勝ってよね!!」

「「「ああ。」」」


仕方なく友達と一日遊ぶのは諦めて、練習試合に付き合うしかないじゃない。


黒「もちろん、あなたの前の高校とは言え手加減はしねーよ。」


と言って黒尾が私の頭を撫でた。


「当たり前よ。
その前に頭撫でないで、崩れるでしょ!」

黒「崩れても可愛いのが俺らの姫だろ。」

夜「じゃじゃ馬姫の間違いだろ。」

海「そうだな。笑」

「どうして私がじゃじゃ馬姫なのよ!」

夜「扱いが難しいからに決まってるだろ。」

「やっくん酷い!!
やっぱりゴールデンウィークしない。」

黒「あー、はいはい。
じゃじゃ馬姫じゃないから。」

夜「やっぱり難しい女じゃじゃ馬姫だな。」


何にしろ、改めて思う。

音駒のマネージャーしていて良かったって。

こんなに必要としてくれるんだから。


黒「さー、じゃじゃ馬姫練習始めんぞー。」

夜「引き続き記録よろしく、じゃじゃ馬姫ー。」

「……いい加減にしろ。」


まぁ、本人達には絶対に言わないけど。

プリ小説オーディオドラマ