第16話

きっと、運命
236
2026/05/06 02:00 更新
三条 彬
三条 彬
はー、久しぶりに、こんなに長く電車に乗ったなぁ
三条 彬
三条 彬
ずっと座ってたから、腰痛いね
新田 桃音
新田 桃音
……
目的地の駅について、三条くんは大きく伸びをする。
だけど私は、それに何の反応を返すことも出来ない。
新田 桃音
新田 桃音
(私が、奪ったんだ。こっちの私の生活を)
元の世界の、ギスギスした親子関係。
隣の席の男子は冷たくて、親友のはずの紗奈とは話もしない。
こっちで慕ってくれる三人は、友達のふりをしてパシリ扱い。
新田 桃音
新田 桃音
(私が、おまじないなんかしたから)
新田 桃音
新田 桃音
(あっちでの生活を、押しつけちゃったんだ……)
三条 彬
三条 彬
新田
新田 桃音
新田 桃音
!!
三条 彬
三条 彬
大丈夫? 顔色、悪いけど
新田 桃音
新田 桃音
(本当は、ここにいるのは私じゃなかったはずなのに)
新田 桃音
新田 桃音
(三条くんに優しくされるのも、私じゃなかったはずなのに)
新田 桃音
新田 桃音
だ、だい、じょうぶ……
新田 桃音
新田 桃音
ごめんね、ちょっとだけ酔っちゃったみたい
新田 桃音
新田 桃音
でも、もう平気だから
新田 桃音
新田 桃音
今から、どこに行くの? 楽しみ
三条 彬
三条 彬
……
新田 桃音
新田 桃音
あっ──!
三条くんは私の手を取り、すぐそばにある駅のホームのベンチに座らせた。
新田 桃音
新田 桃音
三条くん?
三条くんは、座っている私の目の前に立ち、じっと見つめた。
三条 彬
三条 彬
新田のそれ、くせなのかな
新田 桃音
新田 桃音
癖?
三条 彬
三条 彬
辛そうな顔をした後にすぐ笑う、癖
三条 彬
三条 彬
ごめん。俺、何か傷つけること言っちゃった? そんな顔じゃ、今日楽しめないでしょ
新田 桃音
新田 桃音
ううん、三条くんは何も……
新田 桃音
新田 桃音
ただ、今さら気づいちゃって
三条 彬
三条 彬
何を?
新田 桃音
新田 桃音
私がこっちで幸せってことは……、急に私と入れ替わったこっちの私は、私の元いた世界で嫌な思いさせちゃってるんじゃないかって……
新田 桃音
新田 桃音
こっちの世界は、皆私に優しくしてくれる
新田 桃音
新田 桃音
ってことはね、元の世界は……逆なんだよ
新田 桃音
新田 桃音
こっちの私はきっと、辛いはずで
新田 桃音
新田 桃音
私の、せいで
三条 彬
三条 彬
新田は、本当に優しいね
新田 桃音
新田 桃音
私の、どこが……
三条 彬
三条 彬
優しいよ。だから、元の世界ではひとりでいっぱい傷ついて来たんでしょ
三条 彬
三条 彬
人の気持ちを一番に考えてる新田が優しくないなら、誰が優しいの?
三条 彬
三条 彬
大丈夫。新田がこっちで上手くやってるみたいに、こっちの新田も案外、向こうで楽しくやってるかもよ
三条 彬
三条 彬
どうせ、人の気持ちなんか見えないなら、そう考えた方が楽だよ
新田 桃音
新田 桃音
そんな考え、許されるのかな
新田 桃音
新田 桃音
私のせい、なのに
三条 彬
三条 彬
新田のせいじゃない。ふたりが入れ替わることは、きっと運命だったと思うから
新田 桃音
新田 桃音
運命?
三条 彬
三条 彬
言ってなかったけど、鏡を使ったおまじないは、こっちにもあるんだ
三条 彬
三条 彬
でも、やったみんなが成功するわけじゃない。そんなことになったら、今頃こっちもあっちも大変なことになってるしね
三条 彬
三条 彬
成功したことには、きっと意味がある
三条 彬
三条 彬
新田がここにいるのは、運命なんだと思う
三条 彬
三条 彬
だから、大丈夫だよ
新田 桃音
新田 桃音
……
新田 桃音
新田 桃音
(不思議。三条くんに言われると、本当にそうなんじゃないかって思う)
新田 桃音
新田 桃音
(三条くんは、不思議)
三条くんが、手を差し出す。
私は、そっと指先で触れた。
新田 桃音
新田 桃音
(好きになっても、いいですか?)

プリ小説オーディオドラマ