第10話

真逆の親子関係
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2026/03/25 02:00 更新
結局左利き用の道具は使いこなせなかったので、食材を切るのは全部ママがやってくれた。

私は、調理全般。

ママは「利き手を使わないと危ないわよ」とか、「レシピ見なくていいの?」と、ずっと不安そうだったけど。
新田 桃音
新田 桃音
出来た、ミートソース
ママ
ママ
わあ、すっごーい!
ママが、大げさにパチパチと拍手をして喜んでくれる。
ママ
ママ
すごいわ、桃音ちゃん! やれば出来る子ね! さすがママの子!
新田 桃音
新田 桃音
言いすぎだよ
新田 桃音
新田 桃音
(嬉しいな。料理をしただけで褒められるなんて、今までなかったから)
ママ
ママ
初めてでここまで出来るなんて。さあ、温かいうちに、食べましょう
新田 桃音
新田 桃音
あ、でも私、まだ洗濯物を取り込んでないし、お弁当箱も早く洗わないと。お風呂もまだ、お湯をはってなくて
ママ
ママ
えっ、えっ?
ママ
ママ
落ち着いて、桃音ちゃん。どうしてひとりでそこまでするの?
新田 桃音
新田 桃音
え、だって……
ママ
ママ
洗濯も、洗い物も、ふたりで手分けしてする約束でしょ? ママのやることがなくなっちゃう
ママ
ママ
ゆっくりやりましょう? まずは、おいしくご飯。ね?
ママ
ママ
ほら、座って
新田 桃音
新田 桃音
(ああ、そっか。昨日までのクセで、全部自分でやらなきゃって思ってて……)
新田 桃音
新田 桃音
(こっちの世界では……。こっちのママは、そんなことしなくても怒らないんだ)
新田 桃音
新田 桃音
(出来なくても、いいんだ)
新田 桃音
新田 桃音
うん。一緒にご飯食べよう
ママ
ママ
じゃあ、一緒に。いただきます
新田 桃音
新田 桃音
いただきます
ママ
ママ
……桃音ちゃん、どうかしちゃった?
ママ
ママ
いつもなら、恥ずかしがって一緒にいただきますしてくれないのに
新田 桃音
新田 桃音
っ!!
一口飲んだお茶を、ふきだしそうになった。
新田 桃音
新田 桃音
(そうだ。こっちの私は、勝気で強気)
新田 桃音
新田 桃音
い、嫌だった?
ママ
ママ
まさか。ママ嬉しいな
新田 桃音
新田 桃音
(よかった)
ママ
ママ
んーっ
ママ
ママ
一から作ったソース、すごくおいしいね
ママ
ママ
いつの間に、こんなに上達したの?
新田 桃音
新田 桃音
(毎日料理してたから、勝手に上達しちゃったの)
新田 桃音
新田 桃音
(なんて、こっちのママには言えないけど)
新田 桃音
新田 桃音
ママに食べて欲しくて、勉強してたんだ
ママ
ママ
本当? 嬉しい
新田 桃音
新田 桃音
(ママが、笑ってる)
新田 桃音
新田 桃音
(私の前では、ずっとイライラした顔ばっかりで、忘れてた)
新田 桃音
新田 桃音
(ママは、こんなふうに笑うんだ)
ママ
ママ
? 桃音ちゃんは、いつから右手でもお箸を持てるようになったの?
新田 桃音
新田 桃音
えっ、えーと
新田 桃音
新田 桃音
(いくらこっちの私の真似をしようと思っても、利き手ばかりは無理!)
新田 桃音
新田 桃音
は、流行ってるんだよ。ママ、知らないの? 今、両利きになりたがる子が多くて
新田 桃音
新田 桃音
(どんな流行りだ)
新田 桃音
新田 桃音
(さすがに無理がある)
背中に、ダラダラと滝のように汗が流れるけど。
ママ
ママ
そうなの~。今の若い子は、不思議ねぇ
新田 桃音
新田 桃音
(し、信じた?)
こっちのママは、フワフワしすぎてて心配になるレベル。
新田 桃音
新田 桃音
あ、あはは……
ママ
ママ
……
ママ
ママ
桃音ちゃん、今日はなんだか静かね。落ち着いてるっていうか
新田 桃音
新田 桃音
う、変かな?
ママ
ママ
ううん、そんなことない。どんな桃音ちゃんでも、ママの可愛い子だもの
ママ
ママ
でも、何か心配なことがあったら、言ってね。桃音ちゃんはいつも強い子だけど、ママには、弱音を吐いてもいいんだから
新田 桃音
新田 桃音
っ……
新田 桃音
新田 桃音
うん、ありがとう、ママ……
お弁当に続いて、夕飯の味もなんだかよく分からなかった。
初めて言われた、ママからの言葉で胸がいっぱいになってしまって。
それが、嬉しくて。嬉しくて。
涙をこらえるのに、必死だった。

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