第15話

波乱
288
2026/04/29 02:00 更新
──カタタン、カタタン。
三条くんと隣同士に座って、電車に揺られる。
肩が触れそうなくらい、近い。
三条 彬
三条 彬
昨日急に誘って、迷惑じゃなかった?
新田 桃音
新田 桃音
ううん、全然。……嬉しかったよ
三条 彬
三条 彬
そっか、よかった
三条 彬
三条 彬
昨日、家に帰ってからも、ずっと気になってて
新田 桃音
新田 桃音
三条くんにされて迷惑だったことなんて、今まで一回もないよ
三条くんが、少し不思議そうに私を見る。
新田 桃音
新田 桃音
(え、なに?)
新田 桃音
新田 桃音
(はっ)
新田 桃音
新田 桃音
(私、今の、告白っぽかったかもしれない……?)
新田 桃音
新田 桃音
あの……
三条 彬
三条 彬
あー、ごめん。こっちの新田なら、絶対言わなそうだったから、びっくりして
新田 桃音
新田 桃音
(なんだ、それだけ……)
新田 桃音
新田 桃音
(危なかった)
新田 桃音
新田 桃音
……
電車の中を見回す。
中吊り広告や液晶ディスプレイに表示されるのは、当たり前だけど全てが鏡文字。
三条 彬
三条 彬
どうかした? 電車の中に、何かあるの?
新田 桃音
新田 桃音
あ、ううん。こっちに来てから、電車ってまだ二回目で。通学は歩きだし
新田 桃音
新田 桃音
だからちょっと、見慣れなくて。物珍しいっていうか
三条 彬
三条 彬
さっき、改札通りづらそうにしてたよね
三条 彬
三条 彬
切符も、買いづらそうだったし
新田 桃音
新田 桃音
み、見てたの?
新田 桃音
新田 桃音
(恥ずかしい……)
新田 桃音
新田 桃音
うん、全部が左側にあるからね。腕を伸ばさなきゃだから、それだけで大変で
三条 彬
三条 彬
初めての電車は、どこ行ったの?
新田 桃音
新田 桃音
紗奈に誘われて、隣町だよ
新田 桃音
新田 桃音
大きい本屋さんがあるからって、一緒に行ったの。楽しかった
三条 彬
三条 彬
あれっ、そういえば松川は、新田の右利きのこと何も言ってこないの?
新田 桃音
新田 桃音
言われるよ。なんで最近右利きの練習してるの? って。ほら、お弁当食べる時も、右手使ってるから、紗奈はそれを目の前で見てるし
新田 桃音
新田 桃音
でも、紗奈は、『桃音が変なことしても、今さら驚かないけど』って
三条 彬
三条 彬
なんか分かるな。想像出来る
新田 桃音
新田 桃音
もう、こっちの私は自由すぎるよ
三条 彬
三条 彬
そうだね
三条 彬
三条 彬
やっぱり、疲れる?
新田 桃音
新田 桃音
うーん……、少し
新田 桃音
新田 桃音
でも、うらやましいかな。こっちの私は、幸せな生き方を常に選んだ結果なんだろうなって感じがする
新田 桃音
新田 桃音
話し方とか行動とか気をつけなきゃいけないのは確かに大変だけど、こっちは元の世界より息がしやすいよ
三条 彬
三条 彬
……
新田 桃音
新田 桃音
……なんて。ごめん。暗い話しちゃったよね
三条 彬
三条 彬
そんなことないよ
三条 彬
三条 彬
今日は、楽しもうな
新田 桃音
新田 桃音
うん。ありがとう
三条 彬
三条 彬
いや、でも、新田たちの性格がこんなに違うなら、あっちの世界に行った新田も大変そうだよね。本人よりも、周りがね
新田 桃音
新田 桃音
……あっちの世界?
三条 彬
三条 彬
え? うん
三条 彬
三条 彬
あっちの世界から君がこっちに来たってことは、こっちに元々いた新田は、鏡の向こうに行ったってことでしょ?
三条 彬
三条 彬
入れ替わったなんて、大変だよな
新田 桃音
新田 桃音
……!!
新田 桃音
新田 桃音
(そうだ、なんで今まで気づかなかったんだろう)
新田 桃音
新田 桃音
(こっちに、私がひとりしかいないってことは、元々いた私がどうなったかなんて、考えるまでもないのに)
新田 桃音
新田 桃音
(私がこっちに来て幸せってことは、入れ替わった私は……)

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