第23話

さよなら
437
2026/06/24 02:00 更新
朝になって、鏡の前で自分とにらめっこ。
新田 桃音
新田 桃音
(泣いたから、腫れてる……)
まぶたの上から、冷たく濡らしたハンカチを当てる。
新田 桃音
新田 桃音
(さっきよりは、マシになったかな?)
ママ
ママ
桃音ちゃーん、どうかしたの?
新田 桃音
新田 桃音
あっ、はーい
リビングに行って、ママからお弁当を受け取る。
新田 桃音
新田 桃音
ママ、いつもありがとう
ママ
ママ
えー? どうしたの? ふふ、どういたしまして
まばたきをして、笑顔をまぶたの裏に焼き付ける。
新田 桃音
新田 桃音
いってきます
新田 桃音
新田 桃音
(きっと、忘れないからね)
新田 桃音
新田 桃音
おはよう、紗奈
松川 紗奈
松川 紗奈
あ、おっはよー、桃音~
松川 紗奈
松川 紗奈
もう、本当に早く登校してくるようになったよね
松川 紗奈
松川 紗奈
桃音、最近真面目すぎ
新田 桃音
新田 桃音
そうかな
松川 紗奈
松川 紗奈
そうだよ、もう~。遅刻常習犯だったの、もはや懐かしいしね
新田 桃音
新田 桃音
でも、明日から元に戻っちゃうかも
松川 紗奈
松川 紗奈
えー? 明日から寝坊する気満々じゃん
新田 桃音
新田 桃音
うん
松川 紗奈
松川 紗奈
うん、じゃないっつーの
松川 紗奈
松川 紗奈
そうだ、桃音。土曜日、また本屋付き合ってくれない? 前に電車で一緒に行ったじゃん。あそこ
新田 桃音
新田 桃音
うん、行きたいな
新田 桃音
新田 桃音
……明日、また誘ってくれる?
松川 紗奈
松川 紗奈
一日で忘れる気ー? 本当に桃音は、桃音だなぁ
新田 桃音
新田 桃音
あはは
新田 桃音
新田 桃音
(またこうやって、紗奈と笑って話せる日がきたらいいな)
登校してすぐに紗奈と立ち話をして、自分の席に向かう。
三条くんは、まだ来ていない。
レナ
新田さん、おはようございます!
ナナミ
今日はいい天気ですね
ミカ
ふたりとも、ミカより先にあいさつしちゃってズルーい! おはようございます、新田さんっ
新田 桃音
新田 桃音
おはよう
新田 桃音
新田 桃音
てか、朝からうるさい
ミカ
あはっ
新田 桃音
新田 桃音
……
新田 桃音
新田 桃音
ねぇ
レナ
なんですか?
新田 桃音
新田 桃音
あんたたち、私のこと……嫌いじゃない?
ナナミ
何言ってるんですか?
ミカ
そうですよ、そんなわけないですっ
レナ
好きで当たり前じゃないですか
新田 桃音
新田 桃音
そう。うっとうしいんだけど
ミカ
ふふ、そんなこと言っちゃって
新田 桃音
新田 桃音
(あなたたちに、代わりに言わせてごめんね)
新田 桃音
新田 桃音
(どちらの世界でも、好きなものは同じ)
新田 桃音
新田 桃音
(だけどこれは、こっちの私と三人が作り上げた関係性があってこその感情だから……)
新田 桃音
新田 桃音
(せめて、こっちの世界では、ずっと)
新田 桃音
新田 桃音
……ねぇ、ずっと私のこと好きでいてね
三条 彬
三条 彬
新田、もう……決めたの?
新田 桃音
新田 桃音
うん
放課後は、三条くんといつもの階段へ。
新田 桃音
新田 桃音
分かっちゃった?
三条 彬
三条 彬
今日、ずっと元気がないように見えたから、そうなのかなって
新田 桃音
新田 桃音
うん……
新田 桃音
新田 桃音
最後は、三条くんに会いたいと思って
この時間も、もう本当に今日で最後。
新田 桃音
新田 桃音
昇降口まで、一緒に行かない?
三条 彬
三条 彬
……
三条 彬
三条 彬
帰るって、決めちゃったんだよな。本当に……
新田 桃音
新田 桃音
うん。三条くんには、いっぱい助けてもらったよね
新田 桃音
新田 桃音
本当に、ありがとう
三条くんと一緒に、わざと遅くまで残っていたから、誰もいない。
私の右手には、折りたたみのミラー。
ここにある、姿見の前で映せば、そしたら……。
新田 桃音
新田 桃音
……
新田 桃音
新田 桃音
もう会えなくなる時に言うって、ズルいと思うんだけど
ごくんと、空気を飲み込む。
新田 桃音
新田 桃音
私はずっと……、三条くんのことが、好きでした
新田 桃音
新田 桃音
入学式に助けてもらったあの日から、ずっと
目の前の顔が、とても驚いている。
三条 彬
三条 彬
え、あ、俺……を?
新田 桃音
新田 桃音
うん。今、ここにいるあなたを
三条 彬
三条 彬
えっと……
新田 桃音
新田 桃音
ごめんね。困らせたかったんじゃないの
新田 桃音
新田 桃音
伝えなかったら、一生後悔すると思ったから
三条 彬
三条 彬
困ってなんかないよ。ちょっとびっくりして……
三条 彬
三条 彬
嬉しい
三条 彬
三条 彬
本当に、ありがとう
その笑顔に、私も自然と笑顔になる。
三条くんは、鏡みたい。
笑顔を映す、鏡。
新田 桃音
新田 桃音
(この思い出だけで、これからも頑張れる)
新田 桃音
新田 桃音
(私は、私の世界で生きていける)
新田 桃音
新田 桃音
あのね、三条くん、言ったよね。好きなものは、どっちの世界でも同じって
新田 桃音
新田 桃音
だからきっと、こっちの私も、三条くんのことが好きだよ
三条 彬
三条 彬
……えっ
三条 彬
三条 彬
な、なんでそれ、知っ……、え?
三条くん、真っ赤。
新田 桃音
新田 桃音
(この顔、初めて見た)
新田 桃音
新田 桃音
三条くんが好きなのが、もうひとりの私で、嬉しい
新田 桃音
新田 桃音
(嘘じゃない。本当に、そう思ってる)
新田 桃音
新田 桃音
こっちの世界で、三条くんに出会えたことが一番幸せだったよ
折りたたみのミラーを、ゆっくりと開く。
鏡と鏡に、自分の姿が映る。
三条 彬
三条 彬
に、新田!
世界が、ひっくり返るような感覚。
三条 彬
三条 彬
あっちの俺もきっと、新田のことが好きだよ!
新田 桃音
新田 桃音
え……?
変わる世界で、最後に目に映ったのは三条くんの笑顔だった。
三条 彬
三条 彬
俺も、新田に会えてよかった

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