第24話

私の世界
394
2026/07/01 02:00 更新
三条 彬
三条 彬
新田
三条 彬
三条 彬
おい、新田!
三条 彬
三条 彬
大丈夫か?
新田 桃音
新田 桃音
ん……
三条くんの、声がする。
三条 彬
三条 彬
新田!
肩をつかまれて、揺らされている。
新田 桃音
新田 桃音
(う……、気持ち悪い……)
三条 彬
三条 彬
新田、目を覚ませ!
新田 桃音
新田 桃音
(や、やめて、揺らさないで……)
新田 桃音
新田 桃音
う、うう……
薄らまぶたを開く。
新田 桃音
新田 桃音
(私、床に倒れてる……?)
新田 桃音
新田 桃音
(ここは……学校?)
私の頭を手で支えて、心配そうな表情をしているのは、三条くん。
新田 桃音
新田 桃音
(……三条くん!?)
目を開けて、ガバッと起き上がる。
私たちがいる場所は、学校の昇降口。
外が真っ暗で、蛍光灯が点いているはずなのに、薄暗く感じる。
三条 彬
三条 彬
起きたか……
新田 桃音
新田 桃音
三条くん……
新田 桃音
新田 桃音
私、戻ってないの?
三条 彬
三条 彬
戻る?
新田 桃音
新田 桃音
(あ、違う)
新田 桃音
新田 桃音
(この三条くんは……)
新田 桃音
新田 桃音
えっと……、お久しぶりです
三条 彬
三条 彬
確かに、こっちの新田は、久しぶりだな
ホッとしたように口角を上げる三条くんは、鏡の世界の彼に少し似ている。
新田 桃音
新田 桃音
私が入れ替わったって、知ってたの?
三条 彬
三条 彬
分かるよ。俺も、あっちに行ったことがあるからな
新田 桃音
新田 桃音
そっか、私が違うってこと、見ればわかるもんね
三条 彬
三条 彬
その時に、あっちの新田に巻き込まれたこともあるし
新田 桃音
新田 桃音
巻き込まれた……?
三条 彬
三条 彬
ああ。あっちの新田ってさ、弱いくせに、もめごとに首突っ込むのが趣味みたいで
三条 彬
三条 彬
あっちの世界で、クラスの女子がカツアゲされてるところを、助けようとしてて。たまたま通りがかった俺をおとりにして、逃げたり
新田 桃音
新田 桃音
お、おとり?
三条 彬
三条 彬
あとは、男にしつこく言い寄られてる女子を助けた時は、俺のことを、「今の彼氏はこいつだから、好きなだけ殴りなさい」とか言って、生贄いけにえにして逃げたり
新田 桃音
新田 桃音
そ、それも、たまたま通りがかっただけなの?
三条 彬
三条 彬
そう
新田 桃音
新田 桃音
うわ……
三条 彬
三条 彬
あれもだ。万引き犯に間違われた女子。普通に助けて、そこで終わりにすればいいのに、万引き犯に間違った店員に同じ思い味わわせないと気が済まないとか言って
新田 桃音
新田 桃音
それも、三条くんがたまたま……?
三条 彬
三条 彬
たまたまじゃない。ここまで来ると、俺を付き合わせて当然って顔して、その店員をハメるのに無理やり協力させられた
三条 彬
三条 彬
もちろん、最後はそいつのことを助けたけど
新田 桃音
新田 桃音
(それはもはや、犯罪な気がするんだけど)
これは全て、鏡の世界で三条くんに聞いたことだったけど、バックボーンがこんなにとんでもなかったなんて。
そして、それが三条くんが入れ替わっていた間の話だったなんて。
三条 彬
三条 彬
だから、新田が入れ替わった時、すぐに分かった
三条 彬
三条 彬
相変わらず、やばい奴だった。二度と関わらなくて済むと思ってたのに
三条くんがげんなりした顔で、深くため息をつく。
新田 桃音
新田 桃音
な、なんか、すみません……
責任を感じる。
ふたりの再会は、私がおまじないを実行したせいだから。
新田 桃音
新田 桃音
(……って、あれ?)
新田 桃音
新田 桃音
もしかして、三条くんがいつも私を睨んでたのって、それで?
三条 彬
三条 彬
睨んだつもりはなかったんだけど、そう見えたなら、悪かった
三条 彬
三条 彬
俺が初めて関わった新田が、鏡の世界のあいつだったから、ここに戻ってきた時の新田も、同じような奴かもって、警戒してたんだ
三条 彬
三条 彬
でも、性格真逆で。他人に利用ばっかりされてて、もどかしかった
三条 彬
三条 彬
少しくらい、自分勝手に生きればいいのにって、思ってたから
新田 桃音
新田 桃音
鏡の私を知っているなら、私は真逆で、見てるとイライラしちゃうよね……
三条 彬
三条 彬
なんで、新田にイライラするんだよ
新田 桃音
新田 桃音
え?
三条 彬
三条 彬
新田のこといいように使ってんのは、あの三人の方だろ。新田には、腹立たないよ
三条 彬
三条 彬
あー、でも、好きでもないのに告ってきたの。あれは、イライラしたな
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
ご、ごめんなさい……
三条 彬
三条 彬
いや、俺も。あの時は、キツい言い方しか出来なくて
三条 彬
三条 彬
新田も仕方なくやったことだって、分かってたのに
新田 桃音
新田 桃音
……
三条 彬
三条 彬
なに?
新田 桃音
新田 桃音
あ、ううん
こっちの三条くんが、思っていた以上にやわらかな人で、びっくりした。
新田 桃音
新田 桃音
(勝手に冷たいって決めつけないで、もっと話をしてみればよかった)
新田 桃音
新田 桃音
(鏡の世界の三条くんが、私にしてくれたみたいに)
新田 桃音
新田 桃音
あのね、三条くん
三条 彬
三条 彬
うん
新田 桃音
新田 桃音
私ね、今までの自分がずっと嫌いだったの
新田 桃音
新田 桃音
鏡の世界に行って、あっちの三条くんに助けてもらって、他の人にも関わって、初めて変わろうって思った
三条 彬
三条 彬
うん
新田 桃音
新田 桃音
でも、ひとりはまだ不安だから……
新田 桃音
新田 桃音
わがままを、言ってもいい?
新田 桃音
新田 桃音
三条くんは事情も知ってるし。何かあったら、……た、助けてもらっても、いいですか?
三条 彬
三条 彬
いいよ。そんなの、わがままの内にも入らないだろ
三条くんは無表情をくずして、少しだけ目を細めて笑った。
鏡の世界の三条くんに、似てる。
だけど、やっぱり違う人で。
違う人で、当たり前。
だけど、それでいいの。
三条くんは、三条くんで。
私だって、他の誰にもなれないんだから。

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