第21話

君の話
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2026/06/10 02:00 更新
新田 桃音
新田 桃音
三条くんが、私の世界に……いた?
三条 彬
三条 彬
そう
三条 彬
三条 彬
あっちの世界で、初めて新田に出会ったのは、俺のほう
新田 桃音
新田 桃音
うそ……
新田 桃音
新田 桃音
あ……、だから、私がこっちに来たばっかりの時、違う世界から来たって言葉を、あんなに簡単に信じてくれたの?
三条 彬
三条 彬
そうだよ。経験者だったからね。新田が入れ替わったって、すぐに気づいた
驚いた。
でも、同時に納得してしまった。
元の世界の三条くんは、冷たくなったんじゃない。
別人だったんだ。
新田 桃音
新田 桃音
三条くんはどうして……
新田 桃音
新田 桃音
鏡のおまじないを試したのは、元の世界の三条くん?
新田 桃音
新田 桃音
それとも……あなた?
三条 彬
三条 彬
……俺
困ったように笑う三条くんは、何かを思い出すように天井を仰いだ。
三条 彬
三条 彬
俺は、おまじないを試したことに、大した理由はないんだ
三条 彬
三条 彬
高校受験から解放されて、暇になって。友達に借りた本に、たまたまやり方が書いてあって
三条 彬
三条 彬
成功なんかするわけないって、暇つぶしの軽い気持ちでやったんだ
三条 彬
三条 彬
そしたら……
新田 桃音
新田 桃音
目が覚めたら、あっちの世界にいたの?
三条 彬
三条 彬
そう。なんか、まぬけだよな
三条 彬
三条 彬
びっくりした。全部、逆で。字は読めないし、周りは右利きばっかりだし
三条 彬
三条 彬
本当に、びっくりした
三条 彬
三条 彬
去年病気で亡くなったはずの母さんが、あっちの世界では生きてたんだ
新田 桃音
新田 桃音
えっ……
三条 彬
三条 彬
こっちの世界では、病院に行った時にはすでに病気が進行しててさ、治療が間に合わなくて
三条 彬
三条 彬
でも、あっちの世界での母さんは、もうひとりの俺がしつこく病院に行くように言ったおかげで、病気を早期発見できたらしい
新田 桃音
新田 桃音
……
三条 彬
三条 彬
ずっと後悔してた
三条 彬
三条 彬
母さんが辛そうにしてたこと、俺がもっと早く気づいていればって
三条 彬
三条 彬
もう一度会って、謝りたかった。生きてる母さんに、会いたかった
三条 彬
三条 彬
俺が知ってる母さんよりも、ずっと可愛い性格の人で、そこにもびっくりしたけどな
三条 彬
三条 彬
遊園地に行った日、新田が入れ替わったのは運命って話したけど、それはあの時の俺がそう思いたかったから
三条 彬
三条 彬
二度と会えないはずだった母さんに会って、話をして。運命だと思った
三条 彬
三条 彬
いっぱい謝ったよ。母さん、わけが分からないって顔をしてたけど
三条 彬
三条 彬
結局、そのままあっちの世界で高校の入学式をむかえて
三条 彬
三条 彬
新田に……、君に出会った
新田 桃音
新田 桃音
私……?
三条 彬
三条 彬
気になってたんだ。転んだ時に手を貸した女の子が、なんだかすごく不安そうな顔をしてたから
三条 彬
三条 彬
同じクラスになったけど、接点がなくて、結局全然話せなかったね
新田 桃音
新田 桃音
うん……
私が三条くんに話しかけることが出来たのは、席替えで隣になってから。
その時にはすでに、ふたりは元に戻っていた。
三条 彬
三条 彬
入学式から、一ヶ月くらい経ってからだったかな
三条 彬
三条 彬
学校の昇降口のところに、姿見があるだろ? そこで友達を待ってたら、偶然女子生徒が、鏡を見ながら通り過ぎたんだ
三条 彬
三条 彬
合わせ鏡になって、俺がそこに映って。足元からひっくり返されるみたいな感覚のあとに……
三条 彬
三条 彬
突然、世界が元通りになったんだ
新田 桃音
新田 桃音
その時に入れ替わったのは、三条くんだけ? 一緒に映ったはずの女子は……
三条 彬
三条 彬
俺だけ
三条 彬
三条 彬
遊園地の日に、言ったでしょ。あのおまじないは、試した全員が入れ替わるわけじゃないって
三条 彬
三条 彬
あれね、俺の実体験だったんだよ
新田 桃音
新田 桃音
あ……
三条 彬
三条 彬
すぐにまた、合わせ鏡をした。でも、何度やっても、もう成功しなかった
三条 彬
三条 彬
きっと、一回の往復分しか使えないんだ
三条 彬
三条 彬
母さんにさよならと、あとは、あっちの俺にも謝りたかったな。突然世界を変えられて、辛かったと思う。母さんが亡くなった世界に、放り込んでしまったから
三条 彬
三条 彬
新田は、後悔をこっちに残さないでほしい

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