紗奈と本屋に寄ってから帰宅すると、ママはまだ帰っていなかった。
元の世界なら、食材や日用品の買い物も、私の役目だった。
平日の仕事で疲れているママは、土日は出かけようとしなかったし。
こっちのママはほとんど毎日、仕事を定時で終わらせてくる。
さりげなく会社の名前を聞いた時は、元の世界のママと同じ会社だった。
ママが帰ってくるまでお風呂の準備をしようと、制服を着替える。
朝にした洗濯物を取り込んだ、その時。
小走りで玄関まで迎えに行くと、両手にエコバッグを提げたママが、ドアを開けづらそうにして入ってきたから、慌てて手伝う。
バッグには、スーパーで買った食材がぎっしり詰まっているのが見えた。
ジーンと、目の奥が熱くなる。
泣きそうな顔を見られたくなくて、荷物を持ちながらママに背を向ける。
こっちの世界での、学校での姿は、三条くんが教えてくれる。
だけど、さすがに家での様子は知るはずもないから、それは聞けるわけもなくて。
家でまでキャラを作るのは疲れてしまって、いつの間にか、ほとんど元の自分になってしまったけど。
ママが見せてくれたのは、見覚えのあるケーキ屋さんのロゴが入った白い箱。
元の世界にもある、ケーキ屋さん。
箱を開けてみると、生チョコが乗っているキャラメル色のケーキがふたつ。断面にバナナが見える。
*
夕飯の後に、ママと食べたキャラメルバナナケーキは、すごくおいしかった。
三条くんの言葉を、思い出した。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。