第11話

ふたりきりの勉強会
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2026/04/01 02:00 更新
新田 桃音
新田 桃音
行ってきまーす!
ママ
ママ
いってらっしゃい。車に気をつけてね
鏡の世界に来て、一週間。
折りたたみミラーとママが作ってくれたお弁当を忘れずにかばんに入れて、学校に向かう。
新田 桃音
新田 桃音
(鏡文字も、四六時中見てるから、慣れてきたな)
新田 桃音
新田 桃音
(鏡に映さなくても、なんとなく読めるようになってきたし)
新田 桃音
新田 桃音
(さすがに、何も見ないで書くのは無理だけど)
学校に着いて、昇降口で靴を履き替えて、初めに出会ったのは三条くん。
三条 彬
三条 彬
おはよ、新田
新田 桃音
新田 桃音
あ、三条くん。おはよう
三条 彬
三条 彬
じゃなくて?
新田 桃音
新田 桃音
あっ、えーと……。あ、朝から気安く声かけないでよ……?
三条 彬
三条 彬
うん、そんな感じ
新田 桃音
新田 桃音
今は周りに誰もいないんだし、普通じゃだめかな?
新田 桃音
新田 桃音
あいさつしてくれるの嬉しいから、本当はこんなこと言いたくないよ
三条 彬
三条 彬
だーめだめ。どこで誰に聞かれてるか、分かんないじゃん
新田 桃音
新田 桃音
そっかぁ……
三条 彬
三条 彬
ははっ
三条 彬
三条 彬
本当にふたりきりの時は、そのままの新田でいいけどね
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
う……
新田 桃音
新田 桃音
そ、そっか
三条 彬
三条 彬
こら、動揺しないの
三条 彬
三条 彬
こっちの新田は、「キモッ」って言って、終わりだから
新田 桃音
新田 桃音
無理だよ……
新田 桃音
新田 桃音
(だって、三条くんにそんなこと、思ってもなさすぎるし)
三条 彬
三条 彬
まだまだ勉強が必要かな
三条 彬
三条 彬
ちょうどいいから、一緒に教室行こうよ
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
新田 桃音
うんっ
私と三条くんは、放課後毎日、人がほとんど通らない三階の階段で『勉強会』を行っている。
この世界のこと、私と関係があるクラスメイトの話。
そして、私の元の世界のことも。
新田 桃音
新田 桃音
こっちの世界の右利きって、ちょっと不便なんだよね
三条 彬
三条 彬
ああ、こっちの世界はほとんどの人が左利きだから、いろんなものが左利きに使いやすいようになってるよね
新田 桃音
新田 桃音
うん。自販機も、コインの投入口が逆だし。駅の改札も! 左側に切符入れなきゃでしょ? 体をね、こう……ひねって通る必要があるの
新田 桃音
新田 桃音
もう慣れちゃったけど、スマホの電源ボタンも左側だし。ドアノブも左だし
三条 彬
三条 彬
教室の扉も、開けづらそうにしてるもんな
新田 桃音
新田 桃音
え、見られてたんだ。でも、扉とか冷蔵庫とか、その辺は少し慣れたんだよ
三条 彬
三条 彬
教室も廊下も、窓が逆なんでしょ。右利きだと、自分の影でノート取りにくくない?
新田 桃音
新田 桃音
そう! そうなの! 太陽の昇り方も逆みたいだし
新田 桃音
新田 桃音
今までは、左利きってかっこいいなーって思うだけで、不便なことがあるなんて考えたこともなかったよ
三条 彬
三条 彬
確かに。俺も、周りがほとんど左利きだから、たまに右利きの人を見るとかっこいいなって思うし
新田 桃音
新田 桃音
(三条くんとの、この放課後の時間、楽しいな)
新田 桃音
新田 桃音
(ママと家事を半分こしてるから、元の世界みたいに、学校が終わったら即下校する必要もないし)
新田 桃音
新田 桃音
(確かに、鏡の世界は不便に感じることも多いけど……)
新田 桃音
新田 桃音
(それ以上に、幸せだな)
松川 紗奈
松川 紗奈
あーっ、もう、見つけた、桃音ー!
新田 桃音
新田 桃音
!!
新田 桃音
新田 桃音
紗奈?
新田 桃音
新田 桃音
どうしたの?
新田 桃音
新田 桃音
(じゃなくて)
新田 桃音
新田 桃音
なんか用? 声、うるさいんだけど
松川 紗奈
松川 紗奈
約束忘れてたくせに、偉そうだなぁ、もう
松川 紗奈
松川 紗奈
帰り、一緒に本屋行くって言ったじゃんっ
新田 桃音
新田 桃音
あ!
新田 桃音
新田 桃音
ごめん、そうだった!
新田 桃音
新田 桃音
三条くんも、ごめん。私、行くね
三条 彬
三条 彬
うん。また明日
手を振る三条くんに、私も手を振り返して、紗奈と一緒に廊下を急ぐ。
新田 桃音
新田 桃音
ごめんね、紗奈。次からは気をつけるね
松川 紗奈
松川 紗奈
え、なに? いいよ、別に。桃音が素直だと、気持ち悪いからやめてよ
新田 桃音
新田 桃音
ひどーい
松川 紗奈
松川 紗奈
てか最近、三条くんとめっちゃ仲良いじゃん
松川 紗奈
松川 紗奈
桃音が彼氏持ちになるとか、嘘みたーい
新田 桃音
新田 桃音
ち、ちち、違うからっ
松川 紗奈
松川 紗奈
まだ違うってことね、はいはい
松川 紗奈
松川 紗奈
彼氏が出来たら、一番に教えてよね
新田 桃音
新田 桃音
それは、もちろん
松川 紗奈
松川 紗奈
よし。ね、早く行こ
新田 桃音
新田 桃音
うん
ママが褒めてくれて、親友がいて、好きな人が優しい世界。
新田 桃音
新田 桃音
(ずっと、このままでいられたらいいのに)

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