土手に着くと
シルクくんは走り出した
無邪気な姿に思わず
見惚れてしまった
ゆっくりと
追いかけて行くと
なんか洒落たとこじゃなくて
すいません
どうしてもここに来たくて
息を切らしながら
シルクくんは笑った
ううん、大丈夫!
よっぽど好きなんだね
思い出がいっぱいあって…
あ、ここ座っていいっすか?
あ、うん。
近くにあった
芝生の上に
並んで座った
俺、ずっと読みたかった本があって
図書室で毎日探してたの覚えてます?
シルクくんに
急に聞かれた
え?いつ?
わたし図書委員会のとき?
うん、そう
記憶をさかのぼっても
全く覚えてなかった
…ごめん、全く覚えてない
申し訳なく呟くと
いや、大丈夫っす!
って
シルクくんは笑った
そんとき、あなたちゃんが
声かけてくれて一緒に探してくれて
そっから…完全に一目惚れです
急な話に
私は完全に固まった
あ、これは
出会いって言うか
きっかけを話したくて…
俺、何も知らないわけでもなくて
もちろん罰ゲームでもなくて
ただ俺を知って欲しかっただけです
そうだったんだ…
ちょっと安心した。
会ってたんだ、私たち
んもぅ、何で
覚えてないんすか?
シルクくんが
呆れたように
悲しくつっこんだ
ねぇ、わたし、最低だね
って笑ったら
悲し、俺…
って
シルクくんは
泣いたフリをした
しばらくして
私たちは
一緒に笑った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。