それからというもの、あなたの下の名前は林檎が気に入ったのか、
病室に行くたびにカメラ片手に
林檎を食べるようになった
まあ、小さい頃から林檎が大好きだったからだろう。
毎日記憶を失っているが、
何故かカメラの使い方は覚えていて、
林檎の食べ方も分かっている
それが俺にとって謎でしか無かった
ずっと続けてたら思い出す?
それとも覚えるもんなのか?
でも、やっていると言っても、1日だけのことだ。
行動は覚える、とか?
まあ、詳細は謎のまま
ただ、君に忘れられる日々が過ぎていく
「だれ?」
昨日言われた言葉より
一番最初に言われた言葉の方が鮮明に覚えている
今日も窓の外の景色をカメラにおさめて
満足気にカメラの画面を見ている
幸せなんだ。
君に忘れられても、あの日々が戻らなくても。
俺は幸せです。
君が笑ってくれるなら、。
君がそこにいてくれるなら、
物語みたいにぱって治ることを妄想してる。
でも、そんなSF存在しない。
それなのに妄想する俺は狂っているのかな?
そう言って笑う君に子どもをあやすように返答する
君が俺の名前を前みたいにあだ名で呼んでくれなくても
病院から出られなくても
俺を毎日忘れてしまっても、
俺が君を好きなことに変わらないし、
君の笑顔も変わらない
俺は愛は一方的でいい。
毎日忘れられていい。
名前を呼んでくれなくていい。
迷惑だって、邪魔だって思ってもいい。
ただ、
笑ってて欲しい_
カメラを持たなくなってもいい。
林檎を食べなくなってもいい。
俺と一緒にいてくれなくなってもいい。
やっぱり、笑ってて欲しいだけなんだ。
なんでかって?
それほど、
好きだから、_
外で風がそよぐ
その風が心地いい
一方的に吹き付ける風は俺の想いみたいに曲がらない。
今日も過ぎていく毎日だけど、
ひとつひとつが幸せでありたい_。
ああ、忘れてるのか。
確かに、幸せってなんだろ。
幸せの定義とかもないしなー、
なかなか曖昧な説明をしたと思う。
でも、あなたの下の名前は「しあわせ」を口の中で小さく繰り返し
俺の瞳を見つめる
その問いかけに迷いは無い。答えはひとつ。
そう言うと満足気に君は笑って。
無邪気に笑って幸せを語った__
今日も君は昨日を失くす_./完














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!