座ってからはしばらく無言だった。
だって何を話せばいいのかなんて分からないもん
そしたらね
るぅとくんがさ
そう。
るぅとくんは自分の声が嫌いだ。
音楽の先生に歌声が綺麗ですねって言われても
莉犬くんに“るぅちゃんの声好きだよ”
って言われても
その原因が、今るぅとくんの事を虐めてるあいつ
あいつはね
中学校の時からるぅとくんと同じクラスだった
その時のいじめの対象は僕だった
るぅとくんは心配してくれてた
でも、僕と関われば虐められる。
そう言ったのにるぅとくんは
関わり続けた
だから気に食わなかったんだろうね
ターゲット
そいつは対象をるぅとくんにした
高校1年生の時に
るぅとくんは最初
大丈夫だよ。
って言ってくれた
ただ、るぅとくんが虐められてるのを目の前で見てるのは耐えられなかった
だから僕はるぅとくんに言った
“学校にいる時はるぅとくんに話しかけなくていい?”
って
もちろん学校だけだ
僕はまた虐められるんじゃないかという恐怖があった
僕は、最低な男だ
でもね
るぅとくんは“大丈夫ですよ”って
僕はその言葉に甘えてしまった
学校にいる時はるぅとくんと話さず
るぅとくんが虐められている所を見かけてもスルーしてしまった
こんな最低なやつと一緒にいてもいいことなんて無いのに…
僕の…
僕のせいなんだ…
僕達は、
“小さな逃避行の旅”をしてるんだ。
その日は久しぶりに夢を見た
その夢は昔見た、なーくんの夢だ
なーくん、みんなに好かれてたな…
ねぇなーくん
こんな心が汚くなった僕達の事
なーくんなら助けてくれたかな…
いや、なーくんは居ないんだ…
こんな事願ったって助けられるわけが無い
そんな事を思ってたらね
ありがと…なーくん
僕、どんどん進んでくよ
るぅとくんとかますよ
ヒーローは…
救ってくれる
そう思ってた。
だけど…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。