第4話

りかいされない
10
2019/12/18 12:22
4月。学年が上がり、新しいクラスになった。
彼女は隣のクラス。昨年よりもずっと、教室が近い。

ぼくも彼女もクラスに仲の良い人はいたけれど、毎日、昼休みは2人で過ごした。そのなかでひとつだけ気になっていることがあった。

彼女はボディタッチが多い。

肩が触れるほどすぐ隣を歩くし、必ずと言っていいほど手を繋ぐ。ハグも多いし、話しているときも気づいたら手を握られてる。他の友達にも「カップルみたい」と言われるほどだった。
ただその要因は、よくお互い「大好き」と言い合っていたこともあるかもしれない。




11月。ぼくに恋人ができた。彼女はからかい付きでお祝いしてくれた。けれどそれからは、昼休み2人で過ごすことは減っていった。彼女は気を遣ってくれたんだと思う。ぼくも、それに関して何も言わなかった。

彼女と先輩は以前よりずっと仲良くなっていた。彼女はずっと先輩が好きだった。照れて赤くなりながらも、とても嬉しそうに先輩のことを話す彼女は、可愛かった。愛おしかった。彼女にあんなにも一途に想ってもらえる先輩が、羨ましかった。

ぼくは、通常ひとが異性に感じる「好き」というもの、いわゆる恋愛感情が分からなかった。恋人のことは本当に好きだった。ただそれは、友達と同じように。「大好き」と言葉にした。キスもした。だけど、ドキドキしなかった。離れても寂しくなかった。彼女の話を聞くたび、これが恋ではないことを確信した。反対に、彼女の存在は、ぼくの中で確実に大きくなっていった。2月になる頃には、命よりなにより大切だと。これから先、彼女より大切だと思えるものはないだろうと感じるほどになった。

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