相談にのるうちに、以前よりずっと仲良くなった。先輩の話をする彼女は、輝いていた。恋をすると人は変わるというのは、本当だったのか。
彼女はよく笑う。それにつられて、気づけばぼくも笑えるようになった。他の部員とも仲良くなったし、クラスでも少しずつ話せるようになった。彼女の笑顔に、ぼくはいつも救われた。
10月。合唱コンクールでの演奏を前に、ぼくたちは1時間ほど学校周辺の清掃をした。ぼくと彼女は用具の確認のために、最後に残った。
「話、きいてもらってもいい?」
いつもと何か違った。
「あのね…」
感情の波が押し寄せた。同情なのか、怒りなのか分からないけれど、ぼくのものであることは確かだった。
ぼくが言えるのはそれだけだった。それ以外、言ってはいけないような気がしたから。だけど。悔しかった。どうしようもなく悔しくて、彼女を見れなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。