第3話

がくぜん
9
2019/12/18 10:49
相談にのるうちに、以前よりずっと仲良くなった。先輩の話をする彼女は、輝いていた。恋をすると人は変わるというのは、本当だったのか。

彼女はよく笑う。それにつられて、気づけばぼくも笑えるようになった。他の部員とも仲良くなったし、クラスでも少しずつ話せるようになった。彼女の笑顔に、ぼくはいつも救われた。
   


10月。合唱コンクールでの演奏を前に、ぼくたちは1時間ほど学校周辺の清掃をした。ぼくと彼女は用具の確認のために、最後に残った。

「話、きいてもらってもいい?」

いつもと何か違った。
ぼく
いいよ。どうしたの?
「あのね…」
感情の波が押し寄せた。同情なのか、怒りなのか分からないけれど、ぼくのものであることは確かだった。
ぼく
がんばったね。
ぼくが言えるのはそれだけだった。それ以外、言ってはいけないような気がしたから。だけど。悔しかった。どうしようもなく悔しくて、彼女を見れなかった。

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