口から漏れたため息は、下に落ちていった。
残るわけでもなく、ただ消えた。
全員分を作り終わると、髪の毛だけは拭いておこうと首にかけてあったタオルでガシガシと拭いた。
侑や、治とは違う真っ黒な髪の毛
私も治のような銀に。
侑のような金に。
けれど生まれてきた頃には既に真っ黒だった髪の毛は染めることなく現在。
切り揃えられた髪の毛は、昔から変わらない
足で雑に扉を開けると、ボールを直して駆け足で来た侑。
はい、と渡そうとすると
その手はがしりと掴まれた
侑は私が持っていたカゴとドリンクをリンに渡して、腕を掴んだまま体育館の外へ弾き出す
ギリギリといまにでも腕が折れそうな痛み。
言い訳をすれば良かったのか。
否、きっとしても殴られとるだけやった
いつもより低めな声に、ギャップを感じる。
萌える、なんて言ってる暇はないけど
じー、と見られてつい目を逸らそうとすると、暖かく豆のできた手で頬を包まれた。
私がそう言うと
と言った
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!