『2人とも行くでー』
治と侑は扉から顔を覗かして、私たちを待っていた。
あれ以来、ずっと釘を刺されているような腕の痛み。
まだ夏じゃないから、長袖で良かった。
自分では確認するのが怖くて、
自覚するのが怖くて、見てはいない。
折れている、となれば、
試合に出れる可能性も低くなるからだ。
治がぼーっとした私に気づいたのか、顔を覗き込んできた。
悟られたくなくて、直ぐに返して笑った。
治も安心したように笑って同じ歩幅で歩いてくれる。
治が話してくれるが、全然耳に入ってこない
私のポジションはセッターだ。
手がどれだけ大事なのか、私でも重々分かる。
怪我したセッターなんかいらない。
そう言われてきた人を見てきたのだ。
安心させるように言ったのに、気に入らないのか治は立ち止まってじーっと顔を見てきた。
全部を見られているような感覚に、自然に目を逸らしてしまう。
少し低めの声に、肩が跳ね上がる
治は少し膝を曲げて、私と同じくらいの目線にする。
綺麗な目がゆっくりと私を捉えていて、息がしにくい。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。