同時刻、保健室。
…なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。
私は今、腹痛に侵されている。
今朝、リンがくれた牛乳を飲んでからお腹の調子が悪い。
それもそのはず、消費期限が2日前だった。
リンの事だからわざとじゃないんだろうけど、どんな生活してたら2日消費期限切れた牛乳を持ち歩くんだ…?
私はベッドの上でうつ伏せになりながら、刀也くんの配信のアーカイブを見ていた。
昨日の夜中、配信していたらしい。
配信ではディストピアゲームをしていた。
刀也くんの思考が全面的に出てる。
そういや、こういった考えの人だったな。
刀也くんの私生活を少し覗き見しているようで、不思議な感じ。
あれから、剣持刀也と伏見ガク、そしてその周辺のライバーについて少し調べたけど、頭が混乱して少しインターネットから距離を置いていた。
とりあえず、現実だってことを信じるのに精一杯だった。
またお腹に腹痛が走る。
すると廊下の方から駆け足で迫り来るような足音聞こえてくる。
廊下に響き渡るような大きい音だ。
ドアの向こうから男子生徒が息を切らしながら、大きな声でこちらに話しかけてきた。
とても緊迫感のある声色だった。
渋々、私は前屈みになりながらドアの方に近付く。
返事をしながら、ドアを開けると、
信じられない光景が目に飛び込んできた。
ドアの先には、
真っ赤な顔のサクラをお姫様抱っこしている、
刀也くんの姿があった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。