サクラを保健室で寝かせて先生に報告した後、私は何も考えず刀也くんと行動していた。
刀也くんは体育館近くの自販機で飲み物を選んでいる。
鋭い目で自販機のラインナップを見つめながら、飲み物を選んでいるようだった。
そんな熟考する?
ふと、私は刀也くんの隣に並んでみる。
…。
2年前、私と刀也くんはそこまで身長の差は無かった。
だけど今は見上げないと目は合わないし、何より体格も随分としっかりしたように思う。
ガタン、とペットボトルが自販機から落ちる音が聞こえた。
刀也くんはペットボトルを私に差し出した。
思わずびっくりして、体が熱くなった。
凄く悩んでいたのは、私の飲み物を選んでいたからだと気づいたからだ。
飲み物を受け取ると、二人で近くのベンチに座った。
お互い、正気を戻したのか中々目を合わすことはなかった。
少し笑みが溢れながら刀也くんはそう言った。
なんかこう言うのを何気なく言える人だったな、なんて思い出に浸ってしまう。
私と刀也くんは、まるで目の前の自販機に語りかけているかのように目を合わせなかった。
私は思わず吹き出してしまう。
懐かしいな、この感じ。
やっと目が合ったと思えば、刀也くんはニヤニヤしながらこちらを覗いていた。
刀也くんは少し甲高い声で笑うと、立ち上がった。
刀也くんの視線の先を見ると、体育館から剣道着を来た男の子が手を振って駆け足で寄ってくる。
私も急いで立ち上がる。
ツバキくんは「なるほど〜!」と両手を合わせた。
少し、その言葉に戸惑いを見せてしまった。
私は苦笑いすることしかできなかった。
刀也くんと目が合うと、こちらを見て微笑んだ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。