な、なんでまた…。
ガク先輩は笑顔で刀也くんに近付いていった。
え、なんでこの2人が一緒に…?
と、一瞬頭が混乱したが、
そうだ…この2人は配信者として同期だった。
ガク先輩は私の方に視線を送ってくる。
私は、あはは、と苦笑いするも刀也くんは一切目を合わしてくれなかった。
心臓がちくりと痛む。
今日の刀也くんはどこか無愛想だ。
2週間前は…こんな冷たい態度じゃなかったはずなのに。
ガク先輩は私が持っているぬいぐるみを指差した。
刀也くんの目線が私の手元に来たのがわかった。
ガク先輩は笑っていた。
刀也くんは浅く頷き、こちら方面へと歩き出した。
すれ違い様に、刀也くんが小さな声で私に呟いた。
私は思わず振り返る。
小さくなる刀也くんの背中を目で追っていた。
私が、幸せそう…?なに、言ってるの…
あ…
何か変な勘違いされてない…?
ガク先輩に抱きかかえていたぬいぐるみを押し付けた後、私は刀也くんの背中を追いかけた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。