「あ、れ……なんで私泣いて...」
手紙を読み終わった時、自分の頬に伝う温かいものに気がついた。
自分の涙だった。
「なんで涙なんか.....」
溢れる涙を拭った時、ふと机の上のカレンダーが目に止まった。
「...7月〇△日...って、今日!?」
まさかの事実に思わずベッドから立ち上がる。
訳が分からないのに、何故か行かなくては行けないような気がしてならなかった。
「……行かなくちゃ」
私は制服のままスクールバッグから財布だけを抜き取って部屋を飛び出した。
階段を勢いよく駆け降りると、リビングからお母さんが出てきた。
「あら優花、どうし」
「わかんないけど、行かなくちゃ行けないから!!!」
お母さんの言葉を遮って私は家を飛び出した。
「.....がんばれ」
お母さんのその言葉には気付かずに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!