私が江口さんのプロポーズを断ろうと思った理由。
それは前の恋愛があったから。
赤城乾景くん。
高校生の頃付き合っていた元カレ。
出会いは高2の2学期初め、クラスに転校してきたとき。
赤城「あ、赤城乾景です、」
「じゃあ、席は衣更さんの隣ね。」
赤城「よろしくね」
あなた『よ、ろしく…』
当時、いや今もだけど、極度の人見知りだった私は、突然出来た「隣の席の人」と仲良くなれるのかすごく不安だった。
でも彼はあまり話さない私に、優しく接してくれた。
赤城「衣更さん、次移動だよ、」
赤城「衣更さん!昼一緒に食べない?」
赤城「衣更さん、前これ気になってるって言ってたよね、!」
次第に「きみくん」「あなたちゃん」と、互いに下の名前で呼ぶようになり、それからすぐ、告白を受けて付き合うことになった。
赤城「好き、です。」
あなた『!』
一緒に行った花畑で、顔を真っ赤にしながら、手を繋ぎ帰った。
今でいう「陽キャ」な彼は、その見た目とは裏腹に、植物が好きで、詳しかった。
赤城「僕の名前の「乾景」って、両親が鈴蘭が好きだったから付いたんだ。」
あなた『なんで鈴蘭?』
赤城「鈴蘭の別名が 君影草 だから」
鈴蘭の花言葉は「再び幸せが訪れる。」
赤城「僕に幸せだと思える人生を歩んでほしい。って意味でつけたんだって。」
あなた『きみくん、そう思えてる?』
赤城_「もちろん、あなたちゃんといれるからね。」
あなた『! ふふっ何それ笑』
いつか聞いたそんな話。
そのすぐあとだった。きみくんの亡くなるところを見たのは。
4回目のデート帰り、いつものように手を繋いで笑いあって、きみくんは道路側を歩いてくれていた。
赤城「梅原って、そんなことするの笑?」
あなた『そー、』
いとこでも同じ学校だった裕のことをきみくんは知っている。
あなた『でね、そんとき裕が──』
赤城「あなたっ、!」
あなた『え、?』
飛び出した私に突っ込んできた大きなトラック。
私を突き飛ばしてぶつかったきみくん。
確かにその時は青信号だった、なのにきみくんは轢かれちゃった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。