#02[過保護に]
IDOLiSH7の初LIVEから数日後、本格的に活動していくために事務所の寮に住むことになったらしく、実家を出ることになった陸。
幸いにも歩いて5分もかからないくらいの距離に私の家があるので、何かあった時はすぐに駆けつけられそう。
「これでいつでもあなたねぇの家に遊びに行けるねっ。」
なんて、嬉しそうに荷造りしていた。
「部屋はしっかり掃除するのよ?ご飯はちゃんと栄養とって、夜は暖かくして寝ること!」
「わかってるよ~。」
私が過保護過ぎるように見えるかもしれないが、それ以上に陸はとてもおっちょこちょいで少し世間知らずな所がある。
まぁ寮にはメンバー全員で住むらしいし、その中の3名は成人しているそうなのできっと大丈夫だと願いたい。
それとリーダーさんは私と同い年らしい、しっかりしている人だと良いな。
「そうだ陸、病気のことは事務所の人に言ってあるの?」
「っ!!もっもちろん知ってるよっ。」
「そう、なら安心ね。」
嘘だな。
陸は昔から嘘が下手なのですぐ動揺してしまうのでわかりやすい。
事務所の方に迷惑をかける可能性があるがここは一旦見逃しておくことにしよう、メンバーと事務所の方たちが信頼出来るかどうかまだわからないし…。
やはりしばらく様子を見た方が良さそうだ。
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「送ってくれてありがとう!またラビチャするね~!」
「はーい、しっかりやるのよー。」
陸を車で寮に送り届けて私も自宅に帰る、早急に残っている作業を片付けなければならない。
まだ午前中なので今日中には終われそうだ。
私、七瀬 あなたは
7月7日生まれの22歳
職業、フリーのラビチューブ活動者
活動名は【七夕 洋】(タナバタ ウミ)
基本顔出しはしておらずLIVE等の時は顔が半分隠れる無地の仮面を付けている
歌ったり踊ったりゲームしたり作曲したりしている
16歳からこっそり活動していて、両親は知らない。
陸は歌は歌ってるけど趣味程度だ、ていう認識。
天はもちろん知らない。
もともと両親がショークラブを経営していたということもあり歌ったり楽器を演奏するのは好きだった。
天と陸と3人でよく歌ってた。
天が家を出た頃は家の悲しい雰囲気から逃げたくなって学校帰りにギター持って1人で公園で作曲したり。
高校卒業後は家を出てイベントやLIVEに出演しつつ地道に活動していた。
19歳になり、いろいろあって半ばやけくそで作詞作曲した歌を投稿したら思いの外反響があってそこから本格的に作曲活動することになった。
何度かスカウトの話もあったけど芸能界には入る気はなかった、家族のトラウマもあるし何より……
【彼】がいるから。
あの日、私のつまらない意地で傷付けてしまった。
強がって、手放してしまった。
私に彼に会う資格はない。
だからかわりに、違う場所でかつて貴方に捧げた歌をこれからも歌う。
どうか、【幸せでいて】
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数日後
今日も作業の合間をぬってIDOLiSH7の路上LIVEを観戦していた。
ちなみに初LIVEから今まで欠かさず見ていることは陸は知らない。
毎回変装してこっそり見守っている。
最近はちょこちょこ固定のファンがついてきたようだ。
LIVEが終わり、物販スペースでCDの販売をしていたのでさりげなく立ち寄る。
もちろん使用、保存、あと友人に布教用で…
「3枚、お願いします…。」
「はっはいっ…、ありがとうございます!!」
会計をしてくれた女の子はおそらくマネージャーだろうか、目を輝かせてとても嬉しそうに対応してくれて可愛らしかった。
今回も陸の体調は大丈夫そうなので、気づかれる前にその場を後にした。
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翌日、陸からラビチャがきた。
【来月、TRIGGERのLIVEに行くことになった。】
【TRIGGER】
天がセンターを務める、人気絶頂中の3人組のグループ。
陸も私も天にはずっと会っていないし、LIVEも行きたいと思えなかった。
今回はマネージャーの方針で自分たちの活動を抑制して外部からの刺激を受ける、という名目でTRIGGERのLIVEに行くらしい。
陸は大丈夫だろうか、あの日を思い出して発作を起こさないか心配だ。
様子を見に行きたいけど、今からじゃ流石にチケットは用意出来そうにないし…。
プルルルルルル
着信…キヨから?
ゲーム実況者【キヨ】
動画投稿を始めてから最初に出来た友人。
よく一緒にゲームしたり動画撮ったりしている。
「もしもし」
「あのさー、来月21日空いてる?TRIGGERのLIVE行くんだけどフジがわくバンの配信があるらしくて…あなた一緒に行ってくんない?」
なんとタイムリーな…
「君天才……!?」
「なんだよ急に、お前TRIGGER好きだったっけ…?」
「好き好き超好き、ありがとう!」
「おー…じゃあ来月なー。」
これでもし発作を起こしてもすぐに対応が出来る。
後で陸の席を聞いておこう、近いと良いんだけど。
誘ってくれたキヨには悪いけど利用させてもらおう。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。